long | ナノ







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何だろう…何か身動き出来なくて少し苦しい様な…。



『…あれ、何だ雷士か…』


ポケモンセンターの一室で一夜を明かし目を覚ますと何故だか息苦しかった。まず視界に飛び込んできたのは黄色い頭。ピクッと耳が動いたけれど未だ雷士は眠りの中だ。


…ん?あれ、あたしのお腹に回っているこの腕は誰のものだろう。手触りも形もどう考えても人間の腕だ。

あたしは恐る恐る振り向いた。すると…



『―――っわあぁああぁ!!』

「っ!?」


藍色の髪の精悍な顔付きをしたイケメンが真横で寝ていました。



―――――――



『…あの、申し訳ございませんでした。朝早くにはしたない大声を上げて雷士並びに蒼刃の安眠を妨げた事、心の底から反省しています…』

〈…よろしい。じゃあお詫びに今日は僕を一日抱っこして移動する事を命じる〉

『はい喜んで!(でもそれっていつもと一緒なんじゃ…)』

「い、いけませんヒナタ様!お顔を上げて下さい!」


あたしは今椅子の上で短い足を組み、こちらを見下ろす雷士へ土下座していた。元々低血圧な雷士は寝起きの機嫌があまりよろしくない。そこへあたしの悲鳴で飛び起きたものだから少々ご立腹なのである。

まぁでも何とか許して貰えて良かったよね、トレーナーの威厳とか皆無だけど電撃浴びせられるより良いしね。


「雷士…っヒナタ様に何という侮辱を!それが主に取る態度か!?」

『い、良いよ良いよあたしが悪いのは本当だし…』

〈そうだよ、ヒナタちゃんがこう言ってるんだし気にしなくて良いよ〉

『ムカつくけど言い返せない!!』


雷士が怖いよ…普段はマイペースだけど比較的良い子なのに…。


…元はと言えばこのイケメンに原因があるとも思うけれど。あんな間近に美形がいたら誰でも驚くってば!


「…?俺の顔に何か付いていますか?」

『べっつにー?イケメンってある意味残酷だなって思っただけ!』

「ヒナタ様!?」


そう、このイケメンは蒼刃なのだ。昨日仲間になったばかりの彼をあたしは抱っこして眠りについた。その時は確かにリオルの姿だった筈なのに…。

擬人化したらイケメンだとは思っていたけれどまさかここまでとは…!

ちなみに彼の言い分としては、人の体温の心地良さに触れて知らず知らずの内に擬人化してしまっていたらしい。確かに蒼刃に悪気は無いから怒ったりは出来ないけれど。


『雷士に怒られたらお腹空いて来ちゃった…ご飯食べに行こっか!』

〈うん。じゃあはい、抱っこ〉

『かしこまりました…。あ、なら蒼刃は肩か頭に乗りなよ!勿論原型でだけど』

「え!?で、ですが…」

『良いから良いから!ほらおいで!』

「…はい!」


煙に巻かれる様に原型へ戻った蒼刃を肩に乗せセンターの食堂へと向かった。朝食は何を食べようかな?


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