long | ナノ







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『わっ、ハル兄ちゃん随分広い部屋取れたんだね!高かったんじゃない?』


ハル兄ちゃんに連れられ案内された部屋はいつもあたし達が泊まるような部屋よりもかなり広かった。

ポケモンセンターにも一般的なホテルのように部屋のランクがあるのだけど…この広さだと高くて良い部屋なんじゃないだろうか。



「はは、澪が頑張ってくれたんだよ」

『澪姐さん?』

「あぁ、澪が狭苦しい部屋なんて御免だっつーからよ…。そこら辺のトレーナーに片っ端からバトル挑んで勝ちまくって金を巻き上げたんだ」

「ちなみに1人勝ちやで!ワイらの出番はこれっぽっちも無しや」

『何それ澪姐さん超カッコいい』

「うふふ、ありがとうヒナタちゃん。というか当然のことだと思わない?私達うら若き乙女をしみったれた部屋に泊まらせるなんて有り得ないわ!」

「誰がうら若き乙女だ…」

「あーら何か言ったかしら昴!?」

「いでででで!!ギブ!マジでギブ死ぬ!!」


ぼそりと呟いた昴の言葉を聞き逃さなかった澪姐さんは素早く昴の背後に回り込み腕で首を締め上げた。あ、相変わらず最強だね澪姐さん…!


「コラお前達、あまり騒ぐと他の部屋に迷惑だろう。もう少し声を落とせ」


おぉ、さすが皆のお父さん改め斉!常に冷静沈着、おまけに懐の広い彼はいつも叱ったり褒めたりする役だ。基本的には皆大人だけれど、時たま賑やか過ぎる面子をまとめられるのはハル兄ちゃんの相棒である彼しかいないと思う。


「それで…ソウリュウはどうだった?シャガさんから面白い話は聞けたかい?」

『うん!あのね、2年前に起きたプラズマ団の出来事のこととか…後キュレムの話も少し教えてもらえたよ!』

「へぇ、キュレムか…それは興味深いね。早速で悪いけれど聞いてもいいかな?」

『勿論!』


大きく頷いてバッグからメモ帳を取り出す。実はあたし、シャガさんに聞いたことをしっかりメモしておいたのです!ちょっとこれ凄くない?あたし新聞記者みたい…!とか思っちゃったよ自分で。


〈ヒナタちゃん、この字間違ってるよ〉

『台無しだよ雷士くん!!』

〈親切に教えてあげたのに何その態度〉

『いだだだだゴメンなさい!!』

「はは、ヒナタと雷士は相変わらず仲良しだね」

「いや今のはただの激しすぎるツッコミだと思うけどな」


うぅ、雷士に例の如く静電気お仕置きされた…あれ地味に痛いから止めてほしいんだよね。

…まぁそれはひとまず置いておいて、あたしはハル兄ちゃんにシャガさんから教えてもらった情報を事細かに伝えた。



−−−−−−−−



「なるほど…キュレムの謎は益々深まったというわけだね」

『うん…シャガさんもそれ以上のことは分からないって言ってた。あ、でもね!セッカシティのリュウラセンの塔に行けばもしかしたらレシラムに会えるかもとも教えてくれたよ!』

「レシラムに!?へぇ、凄いじゃないか!」

「そんで…お嬢は次セッカシティに行くん?」

『うん!貴重な目撃情報だもん』


勿論シャガさんも言っていた通り本当かどうかは分からないけれど…リュウラセンの塔がレシラム達に関係の深い建物ってことに変わりはないし、行ってみる価値はあるよね。


「はは、何だか楽しそうだねヒナタ。顔付きも旅に出て少し変わったんじゃないかい?」

『え、そうかな?確かにちょっとは逞しくなったつもりだけど…』

「あぁ、逞しくなったぞヒナタ。昔は泣き虫で甘えん坊だったのにな…大きくなったものだ」


そう言って小さく笑った斉が優しくあたしの頭を撫でる。何これ発言といい手つきといい…お、お父さん…!


「そ、そうだマスター、皆を紹介するんだよね?」

『あ、そうそう!ねぇ皆、あたしまた仲間が増えたんだよ!』


立ち上がりベルトに装着しているボールから既に擬人化している疾風以外の仲間を出す。本当に広い部屋でよかった…!ラプラスとかウインディって結構大きいもんね。


『紅矢はウインディに進化しました!そして新メンバー、ゾロアークの嵐志にラプラスの氷雨でーす!』

〈よろしくー!〉

〈どうも〉


簡単に2人を紹介したのはいいけれど、広い部屋とはいえやっぱり原型の皆では少し狭いので全員擬人化してもらった。すると真っ先に蒼刃がハル兄ちゃんの元へ…どうしたのだろう?


「お久しぶりですハルマさん!」

「うん、元気そうだね蒼刃。いつもヒナタのことをありがとう」


うわぁああ蒼刃がまた綺麗に三つ指ついてるぅうう!!何で!?何でただの挨拶に三つ指!?ハル兄ちゃんもニコニコしているだけだし何かツッコんでよ!


「く…っそーくんに先越されちまったか。けどオレだって負けねぇぜ!」


嵐志が三つ指ついてる蒼刃を押しのけハル兄ちゃんの目の前へ。そして同じように膝をつく…何それ流行ってんの!?



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