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アイスを食べ終え、せっかくだからと少しサザナミの町を散策することにした。それにしても綺麗だなぁ…全体的に青色でまとめられた町並みは涼やかで落ち着く。


『…あ、見て見て2人共!ストリートバトルしてるよ!』


大通りを歩いていたら前方に見えてきた賑やかな人だかり。目をこらして見ると、どうやらポケモンバトルが繰り広げられているようだ。


『あたし達も見に行こう!』

「はいよ、姫さんのお望みとあらば!」

「面倒くせぇ…」


全く…雷士みたいなこと言わないの紅矢!

2人の背を押してバトル真っ最中のフィールドへ向かった。






「エーフィ、サイコキネシス!」

「あ…っハハコモリ!」


『わぁ…!エーフィ可愛い!』


何とか人混みをくぐり抜けバトルが見られる位置を確保。…というか紅矢が睨みを効かせたら蜘蛛の子を散らすように人があたし達を避けたのだけど。


「おいおい、これで何連勝目だよ…もうここらにいる奴らは皆やられちまったんじゃないか?」

「そうだな…誰か勝てる奴はいないのか」


…おぉ、そんなにこのエーフィのトレーナーさんは強いんだ。確かに見た目からしてエリートトレーナー、って感じだけれど。


「さぁ、もう俺に挑戦する奴はいないのか?どんどん受けて立つぞ!」


エリートトレーナー(仮)さんが声を高らかに周囲に呼びかける。でも名乗り出る人はいない…。

皆負けたんだ…そう思っていた時、キョロキョロと人だかりを見回した彼とバッチリ目が合った。するとエリートトレーナー(仮)さんはニッと笑い、真っ直ぐあたしを指差した。


「そこの可愛らしいお嬢さん、俺とバトルしないか?」

『…え、』

「はっ…、食後の運動くらいにはなんだろ」

「お、こーちゃんやる気だな!」


嵐志はともかく紅矢は珍しくやる気満々らしい。…だったらあたしも頑張るっきゃないよね!


『分かりました!挑戦します!』


あたしが真上に手を上げればどよめき出す観客。もしや舐められている…?あたしみたいな子供が勝てるわけないと思っているのだろう。

確かにあたし自身は強くない。でも…紅矢は強いんだから!


「いい返事だ!それじゃ使用ポケモンは1体、準備はいいね?」

『はい!』


あたしの返事を合図にエーフィが勢いよくフィールドへ降り立つ。よーし…いっちょ皆を驚かせてやりますか!


『紅矢!』

〈ふん〉


擬人化を解いて原型へ戻りフィールドへ立つ。うん、相変わらず目つきの恐ろしいガーディだ。


「エーフィ!でんこうせっか!」

『かえんほうしゃで迎え撃って!』


先制攻撃がヒットする前に撃退する。前から思っていたけれど、紅矢は相手の攻撃をねじ伏せるほどの有り余るパワーを持っているようだ。


「やるね…だったらエーフィ、サイコキネシスだ!」

〈く…っ!〉


エーフィの強力なサイコキネシスが紅矢を襲う。けどその程度でやられるタマじゃないのはあたしも承知済みだ。


『こうそくいどうで後ろをとって!』

「何!?」


ニヤリ、紅矢の口元がニヒルに吊り上がる。次の瞬間その姿は消え、一瞬でエーフィの背後に回り込んだ。


『紅矢!かみくだく!』

「…!」


見事急所にヒットしたかみくだくでエーフィはノックアウト。う…自分で指示したことだけど…あの牙で本気で噛みつかれるのって痛いんだろうな。喰らっても滅多に血とかは出ないポケモンの体は凄い。


『紅矢、お疲れ様!』

〈思った通り大したことなかったな〉

「…負けたよ、君のガーディは強いね!」

『えへへ、ありがとうございます!』


周囲の人々から一斉に歓声が沸き上がる。な、何か照れ臭いけど…やっぱり嬉しいな。




−−−−−−−−−




(…どこに、いる)


サザナミの町を歩く1人の男。爽やかな町の空気とは裏腹にその男の表情はどこか鬼気迫るものがあった。


「おい聞いたか!?あの負け知らずのタツヤが女の子に負けたんだってよ!」

「聞いた聞いた、何でもメチャクチャ強いガーディを使うんだってな!」


すれ違った人達から聞こえてきた会話…それは男の歩みを止めた。


「…ガーディ?」


一言呟いたその男は、薄暗い笑みを浮かべた。



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