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「なるほど…鼻血を通り越した興奮は吐血となってその姿を現すのね」
『何言ってるか分からないですシロナさん!』
ちょ、蒼刃ピクピクしているんだけど大丈夫!?
うつ伏せで倒れたままの蒼刃に狼狽えていると、突然後ろから抱き締められた。
『へ…?』
「…ヤベー、姫さん可愛すぎ…!悪ぃ皆、オレ姫さんとちょっくら裸のお付き合いしてくるぜ!」
「させるか変態がぁあああ!!」
「うぉお!?ちょ、そーくん吐血しながら攻撃すんの怖いからやめろ!!」
『…裸のお付き合いって何?』
「ヒナタちゃんは知らなくていいよ」
(ガキ…)
よく分からないけれど蒼刃が大丈夫そうで良かった!うーん…それにしても皆水着似合ってる…ダイゴさんに任せるってこの水着のことだったんだね。
『…あれ?疾風も真っ赤だけど…どうしたの?』
「っう、い、いや、あの…!まっ…マスターが…可愛くて…」
『…!もーっ、可愛いのは疾風だよ!!』
「うわぁ!?いっ今はあんまりくっつかないでマスター!!」
んもー本当に可愛い我が子なんだから!息子に褒められたお母さんの気持ちってこんな感じなのかな?
「ふふ…どう?私のセンスが光っているでしょう」
「元がいいんだよ元が」
「確かにそれもそうだけど、男のアンタのチョイスじゃここまでヒナタちゃんの魅力を引き出せなかった筈だわ。これは私だからこその結果よ!」
「本当に減らず口だね君は…!」
な、何かまた戦争が始まっている…!今は近付かない方がいいかな…。
そろそろと2人から離れると、何とも逞しく男らしい体をした紅矢がジッとあたしを見ていた。
『…な、何紅矢…?お腹とか太ももの肉が残念だなんて皆の前で言わないでよ傷付くから』
「いや…そうじゃねぇ」
んん?違うなら何だろう…。やけに食い入るように見てくるから妙に気恥ずかしいのだけど。
何ともいえない気持ちに苛まれつつ、紅矢の言葉を待つ。そしてゆっくり開かれた口から出た一言…
「ヒナタ…テメェそこそこ胸でけぇな」
…え、
「紅矢貴様ぁあああ!!ヒナタ様のむ、胸を見るなど万死に値する!!」
「んだよテメェだって見たからさっき血ぃ吐いて倒れたんだろうが」
「こーちゃん、それオレも思ってた!姫さん着やせタイプだけど実は結構デケーんだな!」
…何か紅矢と嵐志が盛り上がっているよ。その代わり雷士の目が超冷めてる。
『…うん、まぁ…太ってるって言われるよりはいいか!』
「いやよくないでしょヒナタちゃんのアホ」
「ら、雷士…口悪いよ」
−−−−−−−−−−
『ん〜っ気持ちいいね!浮き輪でプカプカするの楽しー』
「まぁたまには悪くないね」
今海の中にいるのはあたしと雷士だけ。他の皆は小腹が空いたと言って砂浜で焼きそばを食べていた。うわ、でもダイゴさん焼きそば似合わない…。
『次は水タイプが欲しいかもー。海の上泳いで進むのも気持ちよさそうじゃない?』
「確かに楽だろうけど…それなりに大きいヤツじゃなきゃ無理だと思うよ」
そっか、大きいのかぁ。どんな子がいいかな…
『…あは、何か楽しいね。少し前まであたしと雷士だけだったのに…今はあんなに仲間がいる』
砂浜を見ると怒ったり笑ったりと実に賑やかな仲間達。バラエティに富んでいて本当に楽しい子達だ。
ニッと笑って雷士に同意を求めると…
「…」
何故か、不機嫌そうな顔をしていた。
『…?雷士?』
どうしたのだろう、こんな表情はあまり見たことがない。
「…本当のこと言うと、僕は少しだけ不満だよ。ずっと…2人だったのに」
ずっと、僕とヒナタちゃんだけでいられると思っていたのに。…何てことは、カッコ悪くて言えないけれど。
「でも…皆と出会ってヒナタちゃん本当に楽しそうだから、これで良かったんだと素直に思える。それにどれだけ仲間が増えたって、僕がヒナタちゃんの相棒だってことに変わりはないんだからね」
『雷士…』
「…だから。浮気は許さないよ、ヒナタちゃん?」
『…はい!?な、何言ってんの?』
「さぁね、それより僕もお腹空いてきたから戻るよ」
『あ、まっ待ってよ雷士!』
う、浮気って…どういう意味だろう。雷士の言うことはたまに分からない。
…でも…今のニヤリとした顔が少しだけカッコ良かったなんて、そんな風に思ったあたし自身もよく分からないよ。
うん、とりあえずあたしも焼きそば食べよう。
ちなみにその後ダイゴさんがホウエン地方のチャンピオン、シロナさんがシンオウ地方のチャンピオンであることを知って腰を抜かしたあたしなのであった。
to be continue…
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