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青い空、白い雲…そして輝く海。まるで絵に描いたような美しいリゾート地にて、これまた絵に描いたような美男美女が絶対零度の笑みで互いを威嚇していた。
勿論現在進行形…え、この2人仲良しなんじゃないの?
「ふふ…相変わらず胡散臭い笑顔を貼り付けているのねぇ御曹司サマ?」
「はは、君の性根の悪さに比べたら負けるよ年増さん」
…ピキッ、
『あれ、何か今聞いちゃいけない音が聞こえたような』
((…やっぱりコイツいけ好かない…!!))
『うわ熱っ!2人の火花が熱っ!』
〈関わっちゃダメだよヒナタちゃん〉
いやそんなこと言ってももうダイゴさんとは関わっているし…というかこの美人さんはどちら様?明らかにダイゴさんの知り合いみたいだけど…
今にも罵り合いが始まりそうな時、ダイゴさんがハッとしたようにあたしの方を見た。…あ、忘れられていた感じかな?
「す、すまないヒナタちゃん!驚かせてしまったね」
「あら、この可愛い子誰?まさかダイゴのコレだなんて言わないわよね?」
コレ、と言って小指を立てる美人さん。んん?どういう意味だろうあれ…。
「…君はやっぱり年増だよ、いくらなんでもそれは古いだろう」
「何ですってぇ!?」
おぉ、また喧嘩が始まった…!
『…あ、もしかしてさっき言っていた喧嘩するほど仲が良いってヤツかな?』
〈多分ね。それより面倒くさいからさっさと行こうよ〉
『いや面倒くさいってそんな…』
相変わらず雷士ってば雷士なんだから。ややこしいこととか長くなりそうなこと昔から嫌いなんだよね…面倒くさがりめ!
目線を雷士から口喧嘩中の2人へと戻すと、いつの間にか美人さんがあたしを凝視していた。
…あ、この顔はもしや…
「…貴女今…ピカチュウと喋った?」
『あははー、やっぱりそうですよね…』
うん、思った通り。雷士との会話にビックリしている顔だった。
それにしても美人さんはどんな顔しても美人さんなんだなー、羨ましい!
そんなことを考えていたら、美人さんがダイゴさんの時のようにその美しいお顔をズイッと近付けてきた。上から下まで舐めるように見られて思わず後ずさり。
ひとしきりあたしを値踏み?し終わった美人さんはニッコリ笑って頷いた。ちなみにその後ろでダイゴさんが溜め息をついていたけれど。
「やっぱり…貴女がヒナタちゃんね!」
『…へ?』
この人も、あたしを知っている…?
「ふふ、驚かせてゴメンなさい。私はシロナ!ハルマとは考古学仲間なのよ」
『…シロナ、さん…?』
…あれ、この人の名前は聞き覚えがある…!そう、確かハル兄ちゃんから!
『あ、あの、ハル兄ちゃんから昔お名前聞きました!とっても美人で頭の良い学者さんと会ったって…!』
「あら!ハルマったら正直ねぇ〜!」
「はは、今すぐその印象が大きな間違いだって教えてあげたいよ」
そっか…この人がシロナさんなんだ。うん、確かに美人だし知的って感じ!
「私も貴女のことはハルマから聞いていたわ。あの人写真を見せながら延々と語るのよー、どれくらい貴女が可愛くて良い子なのかとか…」
「僕の時もそうだったなぁ。どんなに可愛さを語っても最後には、でもヒナタは絶対お嫁にやらない!で締めくくっていたけれどね」
『ハル兄ちゃぁああん!!』
〈シスコン全開だね〉
な、何て恥ずかしいことをしているのハル兄ちゃん…!おまけに写真とかいつの!?変なのだったら怒るからね!?
「でも本当に聞いていた通りだわ。そのお日様と同じオレンジの髪も…ポケモンと話せるということも」
『!』
シロナさんに優しく頭を撫でられた。うわ…綺麗な手。澪姐さんもよくこうしてくれたなぁ…。
その暖かさに思わず口元が緩む。我ながらだらしない顔だろう、そう思っていたら突然頭の温もりが消えて代わりに思いきり抱き締められた。
『っ!?』
「か、可愛い…!色々着せ替えとかしたいわ!ていうか妹にしたい!」
「ちょっとシロナ…君の年齢じゃ妹じゃなくて娘だろう」
「失礼ねまだ妹でイケるわよ!!」
(こ、怖い!!)
ハル兄ちゃん…ハル兄ちゃんのお友達は中々濃い人ばかりだね。
…でも、楽しい人達だ。
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