long | ナノ







3

「まぁでも急ぐことではないからね、君を出口まで送り届けてから探すことにするよ。今は休暇中だし時間はたっぷりあるんだ」

『え…な、何か申し訳ないです!』

「いいんだよ、君に何かあったらハルマに合わせる顔がないし…それに僕がそうしたいんだから気にする必要はないさ」


そう言ってニッコリ微笑まれるとあたしは思わず口をつぐんでしまう。その時再び雷士から不機嫌オーラが放出されたけど…何で?


「ヒナタちゃんはどこを目指しているんだい?」

『あたしはソウリュウシティです!ハル兄ちゃんの研究を手伝っているんですけど…そこで役立ちそうな情報を手に入れられるかもしれないと思って』

「そうか…はは、ハルマには随分可愛らしい助手がいるんだね。何だか羨ましいよ」

『じょ、助手…!いい響きですね!』

「あれ、喜ぶところはそこなんだ?」

(ヒナタちゃんの鈍さもたまには役立つんだよね…)





どのくらい歩いただろう…色々と話をしつつ洞窟内を進むと、前方に光が見えてきた。


『あ…あれって出口ですかね?』

「そうだね、もう少しだよ」


やったー!この熱気から解放される!

正直辛かったあたしは内心大喜び。歩けば歩くほど温度が上がり汗ばむ体を早くどうにかしたかった。

でも思わず出口まで走り出そうとした瞬間、突然ダイゴさんがあたしの腕を掴んでそれを制した。


『…?ダイゴさん?』

「しっ!…静かに」


え、え?何事?

険しい顔付きで周囲の気配を探るダイゴさん。雷士もあたしの髪をギュッと握っている…何かを感じ取っているみたい。

すると数秒後、大きく地なりが起こった。


『―――っ何!?』

「僕から離れるなヒナタちゃん!」

〈いやあんたは離れなよ馴れ馴れしい〉

『そんなこと言ってる場合じゃないでしょぉおおお!?』


フラつくあたしを支えるように抱き寄せるダイゴさんに思わずしがみつく。すると雷士がダイゴさんの腕をベチベチ叩いて振りほどこうとしていた。何やってんの雷士!めっ!


「これは…!」


ダイゴさんの声に反応して顔を上げると、地中から何かとてつもない巨体が姿を現した。


『っは、ハガネール!?』


そう、巨大なハガネールが2体出口を塞ぐように出現したのだ。心なしか怒っている、みたい…?


「立派なものだね…けれどこのままじゃマズいかな」

〈おのれ人間…!我等の住処を荒らしに来たか!〉

〈今日越してきたばかりだと思って甘くみおって…許さん!出ていけ!〉

『いやあなた達が出口塞いでるから出られないんですけどね!?ていうか今日引っ越してきたんだご苦労様!』

〈いやそれほどでも…じゃない!我等の言葉が分かるとは何と不気味な人間だ!やはり追い払う!〉


しまった、ついツッコんでしまった!いやいやそれよりも不気味って何よ傷付くなぁ!


「…ハガネール達は何て言っているんだい?」

『えっと…何故かあたし達が住処を荒らしに来たと思っているみたいです。どうも今日ここに来たらしくて…それとノリツッコミされました』

「の、ノリツッコミ…?」

〈このハガネール達頭弱いんじゃないの〉

〈何だとそこのネズミぃいいい!!貴様も許さん!〉

『ちょっと怒らせてどうすんの雷士!』

「!危ないヒナタちゃん!」

『きゃあ!?』


ハガネールのアイアンテールがあたし達を襲った。岩をも砕くそのパワーに冷や汗が伝う…ダイゴさんが引っ張ってくれなきゃ危なかったよ!


「どうやら戦うしかないみたいだね…気絶させるよ」

『は、はい!』


ダイゴさんに続いてボールを取り出そうとした…その時、腰から勢いよく蒼刃が飛び出してきた。


〈ヒナタ様!ご無事ですか!?〉

『蒼刃!見てたの?』

〈はい、倒すべき敵は分かっています。俺にお任せ下さい!〉


さすが蒼刃、頼もしい!あたしを背に隠すように前に出てキッと見据えたその先には…


「…な、何かな?」

〈先ほどはヒナタ様をよくお守りしたと言いたいが…抱き寄せるなど言語道断!成敗してやる!〉

『間違ってる!倒すべき敵が思いっきり間違ってるよ蒼刃!』

〈僕は間違ってないと思うけど〉


睨みつけている相手はダイゴさん…いやいやそんな凛々しい目つきをされても。


『蒼刃、あっち!あのハガネール達と戦って!』

〈!承知しましたヒナタ様!〉


背後のハガネール達を指差すとすぐ理解してくれたらしい。すぐさま臨戦態勢をとる。


「それじゃあ…ダブルバトルといこうか」


―――瞬間、ダイゴさんの目つきが変わった。

高く投げられたボールから飛び出してきたのは如何にも強そうなボスゴドラ。うわ、カッコいい…!


〈生意気な!〉

『!蒼刃、はどうだん!』

〈はい!〉


飛び上がった蒼刃が放ったはどうだんはハガネールの顔面に命中。巨体をよろめかせるハガネール…うん、効いている!


「やるねヒナタちゃん。ボスゴドラ、だいちのちからだ!」


凄い…!まるでじしん並だ。1体のハガネールはその威力に一撃で目を回してしまった。


〈ふん…中々やるな。だが俺とてヒナタ様をお守りする為に鍛錬を欠かしたことはない!〉

『!蒼刃、もう一度はどうだん!』


もう1体のハガネールが再び鋼鉄の尻尾を振り上げて襲いかかってくる。それを軽くかわして強烈なはどうだんを喰らわせた。


「…うん、強いルカリオだね。しっかり鍛えられている」


これでここから出られる…けれどちょっと悪いことしちゃったな。気絶しているハガネール達を見て罪悪感が湧いてくる。


「心配しなくても大丈夫、じきに目を覚ますさ。それより早く出よう」

『は、はい。ありがとうね蒼刃!』

〈いいえ、ヒナタ様の為に当然のことをしたまでです〉


相変わらず堅苦しい蒼刃に苦笑いしつつボールへと戻す。でもやっぱり蒼刃は強いなぁ。

ダイゴさんに連れられリバースマウンテンを抜ける。眩い光が目に染みるよ…!


『…わぁ!綺麗…!』

「リゾート地として有名なサザナミタウンだよ」


海が太陽の光を反射してキラキラ輝いている…。あぁ泳ぎたいなぁ!


「そうそう、ここにはシンオウ地方の「あら、ダイゴ!?」…噂をすれば、だね」

『え?』


女性の声が聞こえたと思ったらダイゴさんが顔をひくつかせた。その目線の先には…


「久し振りね、元気そうじゃない」


長い金髪と涼しげな瞳がとってもクールな美人さんがいました。



to be continue…



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