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…あ、そうだ。ジムリーダーであるフウロちゃんならタワーオブヘブンの管理人さんの居場所を知っているかもしれない。


『ねぇフウロちゃん、あたし達タワーオブヘブンの管理人さんにお願いがあって来たんだけど…どこにいるか知らない?』

「え、そうなの?だったら私に遠慮なく言って!」


…ん?


『フウロちゃん…管理人さんと知り合い?』


もしそうでなければ、何故自分に言ってなんて…


「知り合いもなにも、私がここの管理を任されているんだもの!」

『…え、じゃあフウロちゃんが管理人さん!?』

「そういう事!ね、どんなお願い?」


ビックリした…!でも、ニコニコ笑ってくれているフウロちゃんになら頼みやすいかもしれない。

あたしは疾風にボールから出てもらった。少し人見知りな疾風はフウロちゃんを見てオロオロしながらあたしの後ろに隠れてしまう。でもそんな姿を見て彼女はまたクスリと笑った。


『あのね…実はこのビブラーバなんだけど、お母さんを亡くしているの。それでもし出来るならここにお墓を建ててほしくて…』

「!」


フウロちゃんが大きな目を見開き、次いで疾風をチラリと見た。さすがに驚いたみたいだけれど、数秒の沈黙の後再びニッコリと笑ってくれた。


「分かった、いいよ!私に任せて?」

『…!ほ、本当!?』

「うん!ただね、少し時間とお金がかかっちゃうけど…大丈夫?」


時間は構わない。けれどお金というのがどのくらいかと問うと、その場でざっくりとした見積り額を教えてくれた。

中々高額だったけれど…代金はローン払いもOKだそうで、この額ならば皆が普段のバトルで稼いでくれたお金などで何とかクリア出来そう。ありがとう皆…!特に容赦ない紅矢のバトルがここにきて役立つとは思っていなかったよ!

疾風と手を取り合って喜んでいると、フウロちゃんがあたしの肩を叩いた。


「ねぇヒナタちゃん、せっかくここまで来てくれたんなら鐘を鳴らしていってくれない?」

『鐘…?』

「うん!タワーオブヘブンの天辺に大きな鐘があるのだけど、その鐘の音は亡くなったポケモン達の魂に安らぎを与えると言われているの」


へぇ、凄い…!そんなものがあるんだ。うん、是非鳴らしたいな。


「ちなみに鳴らす人の心によって鐘の音が変わるらしいのだけど、ヒナタちゃんみたいな優しい人ならきっと綺麗に鳴ると思う。ここに眠るポケモン達の為にも…やってくれる?」

『勿論!絶対やるよ!』


即答すれば嬉しそうに笑ってくれるフウロちゃん。こうしてポケモン達を思う彼女だってよっぽど優しい人だと思う。隣りにいるココロモリも嬉しそうだ。


「ありがとう!…あ、でもね…実はここ最近墓荒らしが出没しているの。私も見回ってはいるのだけど…ヒナタちゃんも上に行く時は注意していてくれる?」

『嘘…!う、うん、分かった。気を付けるね』


再びお礼を告げるフウロちゃんと別れ、あたしは最上階を目指す。それにしても…墓荒らし、なんて。



−−−−−−−−−



「ま、マスター…さっきの墓荒らしって、何?」


疾風が擬人化して隣りを歩く。彼も慰霊の鐘を一緒に鳴らしたいとついてきてくれていた。


『えっとね…お墓にはお供え物をするでしょ?そのお供え物を盗んだりとか…あと、亡くなった人と一緒に埋葬した物の中には貴金属とか高価な物もあるからそれを盗んだりするのが墓荒らし、かな』

「そ…そんな酷い人が、いるの…!?」

『みたいだね…信じられないよ』

〈まぁね、立派な犯罪だし〉


悲しさと悔しさが入り混じったような表情を浮かべ、唇を噛む疾風。そうだよね…嫌だよね。やっぱり疾風は優しい子だ。

唇切れちゃうよ、と柔らかいほっぺをつつくとふんわり笑ってくれた。




2階、3階と上がり、とうとう最上階へと辿り着く。外から見た通り雲がかかっていて、相当な高さである事が窺えた。


『わ、風も強いね…!』

「だ、大丈夫?マスター」


風上に立って風避けになろうとしてくれる疾風に笑みが零れた。蒼刃に鍛えられているからか、紳士っぷりがどことなく似てきた気がする…どこぞの横暴キングにも見習わせたい。


『ありがとうね疾風!…あ、鐘ってあれかな。行こう!』


最上階の中心にそびえ立つ大きな鐘…間違いないだろう。雷士も黙祷する為頭から下りてあたしの隣りに立つ。こういう所が律儀だったりするんだよね。

早速鳴らそうとしたその時、鐘の後ろ側から何かが転がってきた。


『…これって…宝石?』


どうしてこんな所に…

不思議に思い回り込む。すると、鐘にもたれ掛かるようにしてしゃがみ込んでいる不審な男性がそこにいた。


『―――っ!?』

「ちっ…!」


男性は立ち上がりあたしを突き飛ばす。驚いたあたしは当然踏ん張る事も出来ず尻餅をついてしまった。


〈ヒナタちゃん!〉

「ま、マスター!」

『大丈夫…!あの人を追って雷士!』


告げた途端すぐさま駆け出し、逃げ出そうとしていた男性の前に雷士が素早く立ちふさがる。ふんだ、雷士の素早さには勝てないよ!


「く…っ」


男性が抱えている怪しげなカバンや、その慌てた様子を見て確信する。最近出没しているという墓荒らしでまず間違いないだろう。

よし、捕まえてフウロちゃんに引き渡そう。あたしも雷士の傍へ行き階段を塞ぐ。


『あたしと一緒に来てもらいます。いいですね?』

「ふ、ふざけんな!舐めるなよガキ!」

『!』


男性はズボンのポケットからボールを取り出し放り投げる。そして中からドリュウズが飛び出してきた。

力づくで通るってわけね…、だったらこっちだって応戦する!



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