long | ナノ







3

「で、その後オレは城を離れてNを探し始めた。結局今まで見つける事は出来なかったけど…でも姫さんのお陰で元気なんだって事は分かって良かったぜ」

『…優しいね、ゾロアークさん』

「いやそんな事…って何で泣いてんだ姫さん!?お、オレ何かしたか!?」

『ち、違う!違うよ…。確かにNさんの話は悲しかったけど、でも…それでも嬉しい』

「嬉しい…?」


ポタポタ落ちる涙は決して悲しいという気持ちだけで出ているわけじゃない。だって、


『ゾロアークさん…Nさんの事、大事に思ってくれてありがとう』


彼は1人じゃなかった。確かに曲がってしまったかもしれないけれど、それでもずっと心配してくれた友達がここにいた。


「…っお、オレは…別に何も」

『あはは、見せてあげたいなー…今のNさんね、本当に幸せそうなんだよ。辛い事や苦しい事を乗り越えて、しっかり前を向いて生きている。変わる事が出来たって本人も言っていたし!』

「…そっか、やっぱ久し振りに会ってみてーな…。会って心配したぜバカヤローって殴ってやるんだ!」

『手加減してあげてね!?』


…きっとNさんが変われたのは、心の奥底に彼の存在があったからだとも思う。そうであって欲しいな。


『あたしね、Nさんの事もゾロアークさんの事も好きだよ。代わりに益々プラズマ団を見逃せなくなっちゃった。…2人の絆を壊すなんて許せない』

「…ははっ、姫さんやっぱ変わってんな。他人の事だぜ?」

『それ前に紅矢にも言われた気がする…。別に良いよ、性分だし!』

「あぁ、だからオレも益々気に入った」


ん?今…

ゾロアークさんはクルリとあたしの方を向いて、しっかりと見つめてきた。…あ、優しい顔。Nさんといる時もこんな表情だったのかな。


「なぁ姫さん、オレを連れて行ってくれ。アンタといたらNに会えるかもしれねーし…でも何より、オレはアンタに惚れた。Nとは違った温もりをくれる姫さんが好きなんだ」

『…!え、そ、それって…仲間になってくれるって事?』

「…鈍いな、まー今はそれでも良いや。な、よろしく頼むぜ姫さん?」


鈍い…という意味がよく分からなかったけれど、彼が嬉しそうに笑うからあたしも釣られる。こちらとしても願ってもいない申し出だ。


『うん、ありがとう!じゃあ名前決めないと…』

「名前?…あぁ、確か愛称つけてたな」


そう、彼の名前…何が良いだろう。出会いはとにかく大騒ぎで…




…あ、思い付いた!




『嵐志、とかどう?』

「あらし?」

『うん!』


全てを巻き込む嵐の様に現れたあなたは、その胸に大きな志を抱いて生きていた。


『Nさんの心を守りたいっていう優しい気持ち…きっと届いているよ。絶対Nさんに会おうね!』

「…嵐志、か…うん、良いな。サンキュー姫さん!やっぱ良い女だぜ!」

『あっはは、なーに言ってんの!騙されないよー!』

(騙してなんかいねーけど…)

『よし、それじゃ皆にも紹介しないと!』


本当にずっと大人しくしてくれた皆に感謝しなきゃ。特に蒼刃とか心配性だから…。

腰のボールから皆に出てもらう。元々ボールが好きじゃない雷士から放たれる負のオーラが超怖かったけれど見ない事にした。


『え、えっと…ありがとうね皆!早速なんだけど今日から仲間になりました嵐志さんです!』

「よろしくー!」


ヘラリと笑い軽く手を上げる嵐志にいち早く反応したのは、やっぱり蒼刃だった。


〈な…っヒナタ様!本当によろしいのですか!?〉

『だ、大丈夫だって!嵐志バトル強いし優しいし…』


蒼刃ってば紅矢の時もこんな感じだったなぁ…キッチリしてるからちょっと不良っぽいのが苦手だったりして?


〈全く…ヒナタちゃんは丸め込まれるのが上手だね。軽く10まんボルトいっとこうか〉

〈アホだな。燃やしてやりてぇ〉

『つまりあたしに死んで欲しいって事かなドSコンビ』

〈ぼ、ボクは仲間が増えて嬉しい、よ?それだけマスターを守れるって、事だし…〉

『疾風ぇえええ!!何て良い子なの!?嬉しすぎて泣いちゃいそう!!』

〈そ、それはダメだよ、マスター!〉

「ぶはっ!賑やかだなー!まぁ…、」

『ん?』


威嚇している蒼刃や雷士をものともせず、あたしに近寄ってきてそのまま肩を抱かれる。あれ、デジャヴ。


〈貴様…!ヒナタ様から離れろ!〉

『まぁまぁ蒼刃…何もしないって』

「そ、何もしない。…多分な」



チュッ、



『…へ、』

「今日はこんだけ!続きは後日ゆーっくりベッドの中で〈はどうだん!!〉うぉ!?」

〈良い度胸だね…僕も色々と歓迎してあげるよ〉

〈人のモンに手ぇ出すヤツは好かねぇな〉

〈ま、マスターに…何て事…!〉

「あっぶね…!ぶはっ、凶暴な王子サマばっかだな!」


…何故か大乱闘が始まった。嵐志も原型に戻って応戦している…。そんなにチャラ男さんが嫌いなのかな?


『…止めても聞かなそうだね…』


お願いだから街の物を破壊するのだけはやめてほしい。そんなあたしの願いが届くのを信じるばかりだ。


こうして心優しいチャラお兄さん、ゾロアークの嵐志が仲間になりました。


…ていうか、ほっぺにチューされたのなんて初めてだ。


to be continue…


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