long | ナノ







3

「ありがとうございます!では始めますよ!」


思いきり外だから何事かと人が集まってきた…でも今は目の前のアクロマさんに集中しなきゃ!


『お願い蒼刃!』


アクロマさんはコイル、対するあたしは蒼刃を繰り出す。鋼タイプ…それは蒼刃も同じなのだけど、見た目はあちらの方が頑丈そうだなぁ。電気技にも注意しないと!


「良い顔つきのルカリオです…!コイル、スパーク!」

『避けてはっけい!』


地面を強く蹴り上げスパークをかわす。そのままクルリと一回転して、ガラ空きになっていたコイルの頭上を叩き付けた。


「何と!」

『良いよ蒼刃!』

〈ありがとうございますヒナタ様!〉


効果は抜群…だけどこのコイルの特性はがんじょう、一撃ではさすがにダウンさせられなかった。


「マグネットボム!」

『!』

〈うぐ…っ!〉


しまった、必ず命中する技だ!蒼刃は素早く避けようとしたけれど叶わない。同じタイプの入っている蒼刃でもノーダメージは無理な話だ。


(連続して使われたら厄介かも…ここで決める!)


蒼刃が立て直した所を見計らって指示を出す。焦ってはダメだけれど、迷いも禁物だ!


『でんこうせっかで後ろに回り込んで!』

〈はい!〉

「!?」

『はどうだん!!』


一瞬で背後に回り込み、威力絶大なはどうだんを喰らわせる。対処する事が出来ずコイルは目を回して倒れてしまった。


「素晴らしい…では次です!」

『ありがとう蒼刃!』

〈全てはヒナタ様のご指示のお陰ですよ〉


蒼刃はサッと後ろへ下がり雷士の隣りへ立つ。バトルを見守ってくれるみたいだ。


「いきなさいゴビット!」

『お願い紅矢!』


ゴビット…正直あまり知らないポケモンだ。勉強したつもりだったのにまだまだだなぁ…でもきっと紅矢なら大丈夫!


〈はっ…軽く捻ってやるぜ!〉


うわ、戦闘狂が光臨した…!どうしよう相手のゴビット生きて帰れるかな。


「ふふ…今度はこちらが有利ですね。ゴビット!マグニチュードです!」

『え!?』


1度ジャンプし、そのまま強く地面を踏み鳴らす。嘘、ゴビットはマグニチュードが使えるの!?もしかして地面との複合タイプ…?もしそうなら完全に油断していた!


〈ぐ…っ〉

『紅矢…!』

〈狼狽えんなバカが!とっとと指示を出しやがれ!〉


紅矢の言葉にハッとする。そうだ…効果抜群だったけれど紅矢は負けていない、絶対負けない!


『かえんぐるま!』


炎を纏い一気に突っ込む。けれどアクロマさんは動じない。その上もう1度マグニチュードを繰り出してきた。


〈2度も当たるかよ!〉


紅矢はマグニチュードが来る瞬間かえんぐるまのまま飛び上がり、そのまま空中から思いっきりゴビットに突っ込んだ。

華麗に着地する紅矢と転がり倒れるゴビットを見てアクロマさんが目を見開く。…ていうかあたしも呆然。


『…さ、さすがです紅矢様!見事な強行突破!』

〈はっ、余裕だっつうの〉

「何と強気なガーディ…!ではこちらも!シャドーパンチです!」


巨大な影で出来た拳が物凄いスピードで向かってくる…!でも紅矢はかわす素振りすら見せなかった。


〈また必中技か…くだらねぇ。分かってるなヒナタ!こんなもん当たる前に片付けちまえば良いだけだ!〉

『い、イエッサー!紅矢、かえんほうしゃ!!』


灼熱の炎を吐き出しシャドーパンチを迎え撃つ。凄まじい威力のかえんほうしゃに耐えかね、シャドーパンチは消え去り業火がゴビットを包んだ。


「な…!?」

『や…やった!凄いよ紅矢!』

〈はっ、俺を誰だと思ってんだ〉


不敵な笑みは紅矢のトレードマークのようだ。テコテコとこちらへ戻ってくる姿は可愛いのに目つきが完全にヤンキーである。ていうか何かあたしが紅矢に指示されてる感じだったけどまぁいっか!


〈いやダメでしょ、プライド捨てちゃダメだよヒナタちゃん〉

〈紅矢…!ヒナタ様に何たる生意気な物言いを!〉


所々火傷になってしまっているゴビットには申し訳ないけれど、やっぱり紅矢は凄い。アクロマさんも驚きを隠せないでいるみたいだった。


「実に面白い…!ではこれが最後です、いきなさいギギアル!」

『頼んだよ、疾風!』


最後…トリは疾風に任せる事にした。アクロマさんは鋼タイプが好きなのかな?疾風にとっては相性有利だし有り難いけれど。


『疾風!すなじごく!』

〈うん!〉

「ボディパージです!」

『!?』


ボディパージ…って、確か…素早さを大幅に上げる技!

疾風の攻撃が決まる前に繰り出されたその技の効果で、呆気なくかわされてしまった。どうしよう…先制される!


「いやなおと!」

〈うわぁ…っ!〉


しまった、今度は疾風の防御が…!今物理攻撃をされたらダメージは大きい。何とかして反撃しないと!


『疾風!あなをほる!』

「遅いですよ!ギギアル、ギアソーサーです!」

〈――――っ!!〉

『疾風!』


先ほど大幅に向上したギギアルの素早さが上回った。おまけに防御がダウンした疾風に2回連続攻撃はキツい…!


〈う…、〉


案の定フラフラと足元が覚束ない。でも、でも…っここで諦めちゃダメなんだ!


「ここまでですか…ギギアル!もう1度ギアソーサーです!」

『頑張って疾風!りゅうのいぶき!』


瞬間、苦しげに閉じられていた疾風の目に力強い光が灯った。ギアソーサーが襲い掛かる寸前、物凄い質量のりゅうのいぶきがギギアルを襲う。


「これは…!」


近距離でヒットした為か、ギギアルが麻痺状態となり動きがとまった。チャンスは今しかない!


『決めるよ疾風!だいちのちから!』


効果抜群のだいちのちからは見事命中。ギギアルは目を回して崩れ落ちた。疾風も満身創痍だけど…しっかり立っている、つまり…


『…勝った…勝ったよ疾風!皆!』

〈う…うん!やったねマスター!〉


ギュウッと強く皆を抱きしめる。やっぱり1番嬉しそうなのは疾風だ。ちなみに紅矢にはウゼェと噛みつかれた。何この人恐い。


「…私の目に狂いはなかった様です。アナタは本当に面白いトレーナーだ!」


ギギアルをボールに仕舞い、嬉々とした表情で歩み寄ってくるアクロマさん。良いバトルをしてもらってこちらも感謝だ。


「アナタのポケモン達は幸せですね…思い切り力を発揮する事が出来るのですから!今後もその調子で頑張って頂きたいものです。ありがとうございました、またお会いしましょう!」


おぉう…喋るだけ喋って行ってしまった。不思議な人だったなぁ…純粋そうなそうでもないような…。本当にまた会うような気がする、何故だか理由もなくそう感じた。


〈ま…マスター、ボク勝てたよ…!マスターと一緒に、勝てた!〉

『うん、嬉しい…!ありがとうね!』

〈ヒナタ様に勝利を捧げるのは当然の事です!〉

〈俺がいて勝てねぇ訳ねぇだろうが〉


何て自信家達だ…!尊敬に値するよね。


とにかく勝てて本当に嬉しかった。疾風も嬉しそうだし…。この調子でどんどん強くなっていけると良いな。


思わぬ出会いもあったけど…今日は改めてバトルに対する心構えや大切な事、勝利の喜びを感じられる日になったのだった。



to be continue…


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