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急所にヒットしたのか、一撃でヤブクロンはダウンしてしまった。凄いなぁ、きっとたくさん鍛えているんだ。
〈お前も中々やるな。ナイスガッツだ!〉
〈え、ちょ、何〉
フタチマルが雷士に近寄って腕を掴み、無理やりハイタッチをさせた。おぉ…!熱い性格みたいだねフタチマル。というか雷士…、
「ははっ、アイツら意気投合したみたいだな。…ヒナタ?どうした?」
『い、いや、そのね、ぷっ…あはは!もうダメ!ゴメン雷士笑っちゃう!その心底嫌そうな顔笑っちゃう!』
〈後で覚えてなよヒナタちゃん…〉
だって普段無表情な雷士があんなげんなりした顔するんだもん!いつもイジメられている側としてはそれが何だか面白く感じてしまう。
フタチマルには申し訳ないけれど、雷士は熱い子が苦手なんだよね…。近くにいるだけで疲れるんだって。
「くそ…っこんな事が…!」
「とにかくここから離れるぞ!」
「!待て!2年前ヒオウギでチョロネコを奪ったのはお前らか!?」
ヒュウくんが逃げ出そうとしたプラズマ団を捕まえ血気迫る表情で問いただす。…そっか、ヒュウ君は…
「ちょ、チョロネコ…?知らねぇよ!だが仲間の誰かが奪ったんだとしたら…どうなっているか保証はしねぇがな」
ニヤリと嫌な笑みを浮かべヒュウくんの手を振り払う団員。その言葉を聞いたヒュウくんが一気に真っ青になった。
そのままプラズマ団は走り去っていく。追おうとも思ったけれど…今の状態のヒュウくんを置いていくわけにはいかない。
『ヒュウくん…大丈夫?』
「…あぁ」
力無く言う彼にフタチマルも心配そうに顔を見上げている。するとヒュウくんはその頭を撫で、静かに語り始めた。
「…俺の妹さ、2年前じいちゃんにプレゼントされたチョロネコをプラズマ団に奪われたんだ。俺もただのガキだったから何も出来なくて…」
…やっぱり…だからヒュウくんはあんなに怒ったんだ。サンギ牧場でハーデリアを必死に探していたのも、大切なポケモンがいなくなる悲しみを知っていたから。
「だから俺は絶対にプラズマ団を許さない。必ず妹のチョロネコを取り返してやる…!」
『…あたしもプラズマ団のやる事は良いと思えない。見つけたら絶対に阻止するよ』
「あぁ…ほんとサンキューなヒナタ。それにお前のピカチュウ凄かったぜ!」
『あは、ありがとう。フタチマルも強かったよ!』
ヒュウくんみたいに実際にポケモンを奪われて傷ついている人もいる。だから尚更プラズマ団を無視する事は出来ないね。それにしても一体彼らは何をするつもりなんだろう…?
「じゃあ俺ジムに挑戦してくる!また会おうぜヒナタ!」
『うん!カミツレさん強いけど頑張ってね!』
ヒュウくんはプラズマ団を追いながらジムにも挑んでいるんだ…凄いなぁ。あたしもちゃんと自分の役目を果たさないとね。
『よし、それじゃあたし達も行こうか』
ヒュウくんと別れライモンシティを出る。カミツレさんのショー凄かったなぁ…またいつか見に来よう。
ホドモエシティへ向かう道を歩いていたら目の前に大きな赤い橋が見えてきた。
『わ…、綺麗な橋だね!』
看板には別名リザードン橋って書いてある…なるほど、確かに似てるかも。
頭上を飛び交うコアルヒー達を眺めつつ橋を渡り、とうとうホドモエシティへ到着した。
『あ、見て見て雷士!あれがPWTじゃないかな?』
ゲートの向こうに見える大きな建物、きっとあれがガイドブックに載っていた施設なのだろう。
〈ふぅん…大きいね。何をする所なの?〉
『えーとね…、』
ペラペラとページをめくり、PWTの説明を探す。あった、これだ!早速読み上げる。
『イッシュだけでなく各地方の強者がその実力を「ヒナタちゃん!?」…え?』
言葉を遮られ誰かに名前を呼ばれた。あれ、でも今の声聞き覚えが…
「やっぱり!ヒナタちゃんだー!」
「ヒナタ!?」
嬉しそうにツインテールを揺らしこちらへ走り寄ってくる女の子と、その少し後ろで驚いた顔をしている男の子。そうだ、この子達は…!
『メイちゃん!キョウヘイくん!』
サンギタウンで出会った2人。ヒュウくんの幼なじみで、ありがたい事にあたしの友達になってくれた子達である!
〈寂しい子だねヒナタちゃん〉
『言わないで!』
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