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〈よっと…着いたぜヒナタ〉
『うん!』
本当に乗れたよ凄いなぁ昴!子どもの頃ならまだしも大きくなったあたしが乗って本当に大丈夫かなぁと半信半疑だったけれど、ムクホークの力を甘く見ていた…。
〈ライモンシティで降ろして良かったのか?ソウリュウシティまで乗せてやんのに…〉
『良いの!ちゃんと自分の足で歩いて行きたいから。ありがとう昴!』
〈っべ、別に…大した事してねぇし〉
〈そうだね、じゃあとっとと帰りなよ。お元気でー〉
〈全く感情のこもってない目で言うんじゃねぇよ雷士!!〉
『こら雷士、喧嘩売らないの!じゃあ行くね昴、気をつけて帰ってね!』
〈…無理、すんじゃねぇぞ。お前が呼べばいつでも…オレが飛んでってやる、から…〉
『ん?何か言った?』
〈声が小さくて聞こえなかったねヒナタちゃん〉
〈うるせぇえええ!!何でもねぇよバカ野郎!!つーか雷士はその嘲笑をやめろ!!〉
な、何で怒っているんだろう…?そのまま昴は顔を真っ赤にして帰ってしまった。
『どうしたんだろう昴…やっぱりあたし重かったのかな』
〈さぁね。まぁいつもあんなだし気にしなくて良いんじゃないの?〉
…それもそうか。ていうか重くないよって嘘でもフォローしてほしかったな雷士くん!!
〈何落ち込んでるのヒナタちゃん。さっさと行くよ〉
『イエッサー…』
ペチペチと尻尾で後頭部を叩かれ進む。さすが雷士…無関心マイペースだね…乙女心クラッシャーめ。
何とか気を取り直して煌びやかな街並みをぐるりと見渡す。ここがライモンシティかぁ…ヒウンシティの様な都会と言うよりはテーマパークみたいだ。
『それもそのはず!何とここには遊園地があるのだよ雷士くん!やったね絶対行こうね!』
〈良かったねヒナタちゃん。でも僕あんまりそういうの好きじゃないから1人で乗ってね〉
『ひどっ!1人遊園地とか自殺行為なんだけど分かってる!?』
何て鬼畜で無気力なピカチュウだ…!いいもん、誰か誘うし!…でも紅矢は無いな。
『あ"ぁ?何で俺がんなウザってぇ所行かなきゃならねぇんだよ燃やすぞ。…とか言いそう』
〈無駄に上手いねヒナタちゃん。悲しい程に紅矢に見下されてる分よく理解してるよ〉
『否定出来ない所がまた心を抉るよね』
確かに自分のモノマネが似過ぎていて悲しくなった…。全くもう、これも全部横暴キングのせいだ!
紅矢は毒を吐かれているとも知らず睡眠中。最近気付いたけれど紅矢も普段からよく眠るタイプらしい。勿論雷士ほどじゃないけれどね。
(紅矢の場合は寝るのが好きって言うか寝るしかやる事がないって感じかな…)
そんな事を考えている内に遊園地到着!入り口からしてキラキラしているなぁ…。人もいっぱいいて楽しそう。
『おぉ…!ジェットコースターも観覧車もある!』
凄い凄い!まずは何乗ろうかなぁ…やっぱりジェットコースターかな!?
『雷士!この場のノリに感化されてジェットコースター乗ってみようって気にならない!?』
〈無理。しばらくさようならヒナタちゃん〉
『薄情者ぉおおおお!!』
あたしの肩から降りて勝手にボールに入ってしまった雷士。何てヤツだ…!
ちなみに雷士はいつもあたしの頭か肩にいるけれど、ちゃんと彼専用のボールがある。外の空気を吸って眠るのが好きらしいから基本は入らないけれど…まさかここに来て逃げ道にされるとは。
『雷士のバカ…薄情ネズミ…』
ブツブツ文句を吐きつつジェットコースターへの道を行く。
…まず雷士はうるさいのが嫌いだからそもそも遊園地自体苦手。蒼刃は付き合ってくれるだろうけれどワイワイ騒ぐタイプじゃないし、疾風は絶叫系が無理っぽい…。
うーん…1人で乗るしかないか…いやでもやっぱり寂しい…こうなったら燃やされるの覚悟で紅矢様に頼もうかな…。きっと彼は何でも得意だろう。
何だか段々自暴自棄になってきたあたしの腰から救いの彼が飛び出した。え、一体誰…
〈…あ、あの…ボク、一緒に行こうか…?〉
…まさかの1番ダメっぽい子が来た―――っ!!
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