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まくし立てる蒼刃に圧倒されて…というか口を挟む隙がないのか、皆ポカンとしている。そんな事は気にも留めず蒼刃は続けた。
「ヒナタ様に助けて頂いたあの日から、俺はこの方を必ずお守りすると決めました。ですのでヒナタ様の事は安心して俺にお任せ下さい!」
「…あれ、何か今引っかかるニュアンスが…。まるで娘さんを僕に下さいと言う彼氏のようなセリフがあったような…ね、樹?」
「せやな旦那…何やろ、ワイ無性にイライラしてきたわ」
「ヒナタちゃん…忠実な男を見つけたみたいで安心したわ。女なら男を掌で転がすくらいの器量を持たないとね!」
『もー誤解だって!蒼刃ってば体張って笑い取りにいかなくてもいいんだよ!?』
〈あれをジョークだと思えるヒナタちゃんが凄いよ〉
〈…〉
「ん?」
突然昴が首を傾げてあたしの足元を見るから、何事かと視線を向けるとビブラーバくんが昴をジッと見つめていた。
『…あ、もしかしてビブラーバくん昴が飛行タイプだって分かった?』
〈う、うん…何となく〉
凄いな、ポケモン同士だとそんな事も感じられるんだ。だいぶ話はしたし…そろそろもう1つの目的を果たそうかな。
『ねぇ昴!ちょっとお願いがあるんだけど…』
「は!?お、お願い…!?(な、何だよ急に…!まっまさか、で、デート…とかじゃ…!?)」
何故か真っ赤になり慌てている昴にあたしも首を傾げつつ、足元のビブラーバくんを前に出す。
『うん!実はね、このビブラーバくんに飛び方を教えてあげてほしいの!』
「…飛び、方…?」
『事情があって飛ぶ事が出来ないみたいで…昴なら何かヒントをくれるんじゃないかと思って一緒に来てもらったんだよ』
〈ぼ、ボク…どうしても飛びたいんだ。だから、教えて下さい!〉
「…あ、そういう…。わ、分かった…オレにやれる事なら手伝ってやる…」
『やったー!さすが昴!やっさしー!』
〈ありがとう…!〉
「おい、何や昴落ち込んでんで」
〈大方ヒナタちゃんからお誘いがくると勘違いしたんだろうね〉
「バカねぇ、そんなの私が許す筈ないのに」
「コラお前達、あまり傷口に塩を塗るもんじゃないぞ」
「うるせぇえええ!!全部聞こえてんだよお前ら!!」
『わ、どうしたの急に怒って。反抗期?』
「ヒナタのバカ野郎!!」
『何で!?』
どうしてあたしが怒られたのか分からないけれど、とりあえずビブラーバくんに指南してくれるみたいで安心した。
さてと…今日1日はゆっくりさせてもらおうかな!まずはシャワーを浴びてこようっと。
−−−−−−−−−
〈さて…早速飛び方についてだが、無闇やたらに羽ばたいて上手く飛べるかと言ったらそうじゃねぇ〉
〈え…?〉
〈いいか、飛ぶ為には勿論大きく羽ばたける筋力も必要だ。だがそれだけじゃなく、風の流れを読みそれに上手く乗ってコントロールする事が大事なんだ〉
〈な、なるほど…!〉
(…おぉ、やってるねぇ)
シャワーを浴びた後日向ぼっこがてら庭に出てみると、原型の昴とビブラーバくんが早速特訓を始めていた。
真面目に飛び方の何たるかを語る昴と、それを真剣に聞いているビブラーバくんは中々良い師弟かもしれない。
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