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『ふぁあ…あーよく寝た…』
窓から差し込む朝日が快晴である事を指し示す。うん、気持ちの良い朝だ。
さて今日はヒオウギに帰る訳だけど…とりあえず顔を洗ってこようっと!
(昨日は皆ボールの中で寝ていたけど、部屋に泊まる時は出してあげないとね。その方がもっとぐっすり寝れるだろうし)
雷士だけボールの外なのは申し訳ない。うんうん、今度からそうしよう。
…あ、そういえば昨日シャワー浴びれなかったしついでに浴びちゃおうかな!
替えの下着を持って皆を起こさないようにソッと洗面所へ向かう。そして顔を洗ってから服を脱ごうとした…その時、
「…あ?何してんだテメエ」
背後のバスルームのドアが開き、出てきたのは擬人化状態の紅矢。所々傷がある引き締まった体を惜しげもなく晒し、赤い髪からは水滴が滴る。
…いや、勿論腰にタオルは巻いている…けれど…
『――――っきゃあぁあああ!!』
〈!?ヒナタ様!?〉
〈な…何、今の…!?〉
〈…はぁ、またヒナタちゃんか…〉
朝からゴメンなさい。大絶叫してしまいました。
−−−−−−−−
『…大変申し訳ございませんでした…。幾度となく皆様の安眠を妨害した事、深くお詫び致します…』
〈本当にね。全く少しは静かに出来ないの?ていうか僕の体だって見た事あるのに何であんなに叫んだわけ〉
『だ、だって…紅矢の方がたくましかったんだもん』
〈…〉
ピシッ、
…あれ、何今の音。何か雷士からすごい冷気が漂ってくるんだけど。え?この子氷タイプじゃないよね?
「はっ!情けねぇな雷士、確かにヒョロすぎるぜ?もっと肉を食え」
〈な、何か…雷士、怖い…〉
ビブラーバくんの言う通りだ。無表情だった雷士がニコリと微笑むと嫌な汗が背中を伝う。…何で、怒っているの?
〈…ヒナタちゃんには…反省してもらわないといけないね…。そうだなぁ…1週間甘い物禁止、でいいかな?〉
『えぇえええ!?む、無理!やだよ我慢出来ないよー!』
〈何か文句でも?〉
『ないデス』
うぅ…久し振りに雷士がキレた…。この時の彼は有無を言わせない圧力があって怖いのだ。でも…甘い物…っ
〈可哀想になぁヒナタ?まぁ俺はそんなテメエの目の前でパフェ食ってやるけどよ〉
『うわぁああん!!紅矢の鬼ぃいい!!』
あたしが泣き出したらくつくつと笑う横暴キング。ていうかこうなった原因はあなただよね!?
〈紅矢!ヒナタ様を傷付けるな!それに雷士、これは不可抗力だ。あまり酷な事を言ってはヒナタ様がお可哀相だろう。大体主に罰を与えるなど俺達がやっていい事ではない!〉
蒼刃…!何て男前なの!?
あたしを守るように背に隠す蒼刃は本当に騎士様だ。モテるわけだよ…さすがだねありがとう!
〈ふ…貧相な体になった事のない君に何が分かるのかな…?楯突くなら10まんボルトを近距離で食らわせてあげるからね〉
〈ぅ…っ何だこの邪悪な波動は!?〉
『あたし貧相なんて言ってないじゃん!紅矢より細いって言っただけだよ!?』
〈それが傷付くんだよヒナタちゃんのバカ!〉
(…に、賑やかな人達だなぁ…)
結局この騒動は一時間くらい続いたけれど、静かにして下さいと注意しにきたジョーイさんの登場で何とか治まった。
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