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『…あ、タチワキに着いたみたい!』
船が到着の汽笛を鳴らす。海を照らす街の灯りが綺麗だ。
『ありがとうね紅矢。また寒い時はお願いします!今度は抱きしめて寝たい!』
〈…へぇ?〉
…あれ、何その顔。ニヤリと不敵に口角をあげたかと思うと、突然擬人化した。クリーム色の混じった赤い髪が灯りに煌めいて綺麗だなぁ…こうして見ると紅矢もイケメンさんだ。
『で、何で擬人化?』
「仕方ねぇから寝てやるよ。この姿で…抱き締めながら、な」
カプり、
『…え、』
「じゃあ俺も戻る。ボーッとして降り損ねるんじゃねぇぞ」
擬人化を解いてボールに帰る紅矢。…いや、ていうか…
(ほっぺ、噛まれた…?)
何で。スッと顔を寄せてきたかと思ったら頬を噛むとか理解不能…。勿論甘噛み、軽くだったけどさ。
はっ!まさか…味見!?人間の肉に興味が出ちゃったの!?
『…いやさすがにそんな事はないか…。ていうかあたしはガーディの姿で一緒に寝たいんだけどなぁ』
人型の紅矢と寝るとか無理、気まずくて死んじゃう。雷士もいるし!
…まぁいいか、きっとからかったんだろうし。とりあえず行かなくちゃ!部屋も取らないといけないしね。
距離は縮まったと思うけれど…やっぱり何を考えてるかよく分からない俺様だ、紅矢は。
−−−−−−−−−
「はい、こちらお部屋の鍵です。奥の104号室へお願いしますね」
『ありがとうございます!』
ポケモンセンターに行き受付を済ませる。夜でもしっかり対応してくれるジョーイさんは優しいなぁ。一緒にいるタブンネちゃんもニコニコしていて可愛い!
鍵を受け取り指定された部屋へと入る。紅矢ももう夢の中だ。皆の寝顔を見ていたらあたしも眠くなってきた…。
ベッドに腰かけバッグの中身を整理していると、ふとライブキャスターが目に入った。
(…うん、ビックリさせたいから黙って帰ろうかな!)
斉にはちゃんと連絡を入れろとか怒られそうだけれど…。
ハル兄ちゃん、皆、あたし少しは役に立てているかな。
暖かく出迎えてくれるであろう家族の笑顔を思い浮かべ、あたしの瞼はゆっくりと閉じていった。
to be continue…
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