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それにしてもNさんは一体何をするつもりだろう?
まだ理解出来ないでいるあたしを尻目にNさんはシンボラーに近付き崖下を指差す。
「ほら、あそこに引っかかっている物が見えるだろう?このビブラーバの宝物らしいんだ。アレをどうにかして取り戻したくてね」
〈…なるほど、それでワシの力を借りたいと…。良いだろう、お安いご用だ〉
シンボラーの目が怪しく光ったかと思うと、崖下の宝物が浮き上がり引き寄せられる様にこちらへやって来る。そしてフヨフヨと泳いでいたそれはNさんの手の中へと収まった。
ここまで来ればNさんが何をしたかったのか理解出来るよね!
『なるほど、シンボラーってエスパータイプなんだ!』
「その通り。飛行タイプでもあるから直接取りに行ってもらう事も考えたけれど…不安定な場所ではシンボラーにまで危険が及ぶ可能性があるからね。もう1つの力を貸してもらう事にしたんだよ」
ねんりきを使えば直接飛んでもらわずとも宝物を取り戻す事が出来る。さすがNさん!考え足らずなあたしと違って良い方法です!
「はい、これで良いかな?」
〈あっ…ありがとう…!〉
嬉しそうに宝物を受け取るビブラーバくん。これの正体は…
『…押し花?』
〈うん…お母さんがくれたんだよ。最初で最後の、プレゼント…。だから、大事なんだ〉
小さなピンク色の押し花。器用に紐まで通してあるけれど手作りなのだろうか。…それに最初で最後って…ひょっとして彼のお母さんはもう、
〈用は済んだか?ではワシは帰るとしよう〉
〈ほ、本当にありがとう!〉
「助かったよ、ありがとう」
シンボラーの声にハッとし、あたしもお礼の言葉を口にする。…踏み入った話は勝手に想像するものじゃないよね。
『さすがですシンボラーさん!お疲れ様でしたー!』
〈何で上司と部下みたいになってるのヒナタちゃん〉
颯爽と去っていくシンボラーさんに感動した。あれが仕事の出来る男の背中か…!
シンボラーさんを見送りふと気が付くと、後ろの方でガックリうなだれている蒼刃を発見した。
〈…俺は…俺はやはりヒナタ様のお役には立てないのか…!!〉
『わぁああゴメン蒼刃そんな事ないよ!!ないから今にも死にそうな虚ろな目しないで!?』
〈はっ、ザまぁねぇなナイト気取りが!〉
『そしてここで出てくるんだ紅矢様!?』
〈コイツのダセェ所をボールの中からよりも直接見て楽しんでやろうと思ってな〉
『出た!他人の不幸は蜜の味精神出た!』
「ふふ、本当に賑やかだねキミ達は」
〈時々まとめて丸焦げにしてやろうかとか思うけどね〉
あぁ、どうしてこんな恥ずかしいやり取りをしなきゃならないの。Nさんはそんなあたし達を見ても嬉しそうに笑う。…ん?喜んでいるのかな?
「それじゃあボクはそろそろ行くよ。またね、ヒナタ」
『あ…は、はい!ありがとうございました!』
そのままNさんは砂嵐に紛れ去っていく。やっぱり不思議な人だなぁ。次に会えるのはいつだろうか…。
〈…ボクも、飛べる様になりたいな…〉
『!』
先ほどのシンボラーさんを見たからなのか、ポツリと呟くビブラーバくん。そうだよね、せっかく羽根があるんだから飛びたいよね。
『…あ、そうだ!ねぇ君、良かったらあたし達と一緒に来ない?』
〈え…?〉
『このリゾートデザートでの調査は一段落ついたから、一度自宅に戻ろうと思っているんだけど…。その家に飛行タイプがいてね、飛ぶ方法を教えてくれるかもしれないから一緒にどう?』
〈あぁ…昴の事ね〉
そう、ハル兄ちゃんと待っていてくれているムクホークの昴。彼は飛ぶのが凄く上手かったからビブラーバくんのヒントになるかもしれない。
〈…ほ、本当に…良いの?〉
『勿論!君が嫌じゃなかったらだけどね 』
ビブラーバくんは少しだけ考え込む素振りを見せたけれど、決意はすぐに固まったみたい。
〈お、お願いします、ボクを連れていって!〉
『よし来た!しばらくよろしくね!』
頭を撫でたら照れくさそうに笑うビブラーバくん。大丈夫、きっとこの子は飛べる。
仮だけど彼をボールに入れさせてもらい腰へセットする。ついでに喧嘩している蒼刃と紅矢も回収。
〈ふぁあ…眠くなってきた。また船に乗って帰るんでしょ?着いたら起こして…〉
『早っ!3秒でおやすみとか赤ちゃん!?』
雷士の眠い眠い病が侵攻を開始した…。ともかくまだ日がある内にここを出て船へ向かおう。確か夜も出してくれる筈だからね!
早くビブラーバくんを昴に会わせて飛び方を伝授してもらわなきゃ。あたしは転ばぬように注意を払いながらリゾートデザートを後にした。
to be continue…
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