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『よし、あたしに任せなさい!だから泣かないで?』
〈え…?〉
〈またヒナタちゃんは首突っ込んで…〉
そうは言ってもね雷士、あたしにはこの子を放っておくなんて出来ないよ。何が出来るかなんて分からないけれど…だからと言って何もしないで見ているのも好きじゃない。
(でもさすがにこの崖を下りて取りに行くのは無理だよね…)
〈ヒナタちゃんの運動神経を考えたらまず不可能だろうね〉
『ちょ、何であたしの考えてる事分かったの』
〈全部顔に出てるんだよ〉
さすが相棒…なんて言っている場合じゃない。悲しいけれどあたしには不可能、だったら…!
『うん、お願い蒼刃!』
ボールから飛び出した蒼刃は音を立てずに華麗に着地した。そしてそのままクルリと振り返りあたしに膝をつく。
〈お話はボールの中から聞いていました。俺にお任せ下さいヒナタ様!〉
それだけ言って立ち上がると、真っ直ぐ崖の際へと向かっていく。…うちの堅物ナイトはやっぱり頼りになります。
蒼刃の運動能力なら崖下に落とした物を取って戻る事も可能だろう。早速蒼刃が狙いを定めて飛び下りようとした時、Nさんがそれを止めた。
「待ちたまえ。確かにルカリオなら取れるかもしれないけれど…一度あの僅かな足場に着地しなければならないとなると危険だよ」
…確かに、元々砂が固まって足場になってる場所だから決して頑丈とは言えないだろう。おまけに足場になりそうなのは宝物が引っかかっている崖の突き出した部分しか無い。
〈蒼刃が着地したらその衝撃で足場が崩れちゃうかもしれないね〉
〈…!や、やっぱり…無理なんじゃ…っ〉
ウルウルと目尻に涙を溜めるビブラーバにやるせない気持ちになる。けれどそれはNさんの笑顔が拭ってくれた。
「大丈夫、ボクに考えがある」 『考え…?』
Nさんはキョロキョロと辺りを見回し、1人頷くと両手を広げ何かに語りかけ始めた。
〈え、何々やっぱり電波じゃん。ヒナタちゃんあんなのに懐かれてご愁傷様だね〉
『シー!可愛い顔して毒吐かないの!』
〈お、お姉さん達、ちょっと静かにした方が…〉
『ぶはっ!ちょっと聞いた雷士!?お姉さんだって!超胸キュンなんですけd〈分かったからもう黙りなよ〉むぐっ!?』
…雷士に尻尾で口を塞がれてしまった。最初に話しかけたの雷士なのに酷い…。ていうか器用な尻尾だね全く!
「…お願いだ、キミの力を貸してくれ。ボクの声に応えてくれるなら…ここに来てくれ!」
Nさんが声を上げた瞬間、それに反応する様に頭上から風が吹いた。砂埃を巻き上げ段々と近付いてくる影。これは…
『…!シンボラー…?』
リゾートデザートに生息するポケモン、シンボラーだ。近くで見ると意外と大きい…!
〈何やら困っている様だな。出来る事ならば手伝ってやろう〉
うわ、しかもこのシンボラーさん凄い貫禄なんだけど。思わずさん付けしちゃったんだけど。声が渋すぎる!ダンディな方だ…。
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