long | ナノ







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「!ヒナタ、もう行くのかい?」

『うん、持ち物も完璧だよハル兄ちゃん!』


一階のリビングへ顔を出せばじんわりと染み渡る様な優しい声があたしを呼んだ。


「タウンマップは持った?傷薬は?着替えは?」

『だーいじょーぶだって!ちゃんと確認したもん!』

「本当だね?ライブキャスターに僕の番号も登録したね?」

『勿論!ハル兄ちゃん心配し過ぎだよー。』


このお兄さん…ハル兄ちゃんはあたしの育ての親みたいな人。幼い頃にお父さんとお母さんを亡くしたあたしを引き取って育ててくれたんだ。まぁ2人目のお父さんと言うよりは、歳の離れたお兄ちゃんに近いとあたしは思っているけれどね。


「…本当に行くんだねヒナタ?何も無理して僕の手伝いなんてしなくても…、」

『ううん、あたしがやりたいの。もう16歳だし…研究所をあんまり離れられないハル兄ちゃんの代わりにあたしが外へ出て手伝いをすればもっと捗るでしょ?』


ハル兄ちゃんの職業は考古学者。あまり難しいことは分からないけれど、その業界では割と有名人で主に神話や遺跡、化石などを研究していると言っていた。

あたしはあたしの為に研究の時間を削ってお世話をしてくれたハル兄ちゃんへ何か恩返しがしたいと思っていたのだ。

だから今日がその一歩。今まであたしに費やしてくれた時間を研究に使ってほしいから、あたしは旅に出るという形でフィールドワークをすることに決めた。

元々カントーからこのイッシュ地方に来たのは理由があってのことだし、それに…


『色々な街へ行ったりたくさんの人やポケモンと触れ合って、あたしの世界を広げていきたいと思うから。それに1人じゃないから大丈夫だよ、雷士がいるもん!』

〈そうだよ、ヒナタちゃんは寝ていない限り僕が守るから。〉


ちょっと今寝ていない限りって言わなかったこの子!?本当にあたしを守る気あるのかな…せっかく良い話をしていたのに台無しだよ。


「…うん、雷士はしっかりしているもんね。ヒナタを頼むよ?」


…ポケモンの言葉が分からないハル兄ちゃんには雷士の鳴き声にしか聞こえていないだろうに、何かが通じ合ったらしい。柔らかく微笑んで雷士の小さな頭を撫でた。


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