3
『本当にありがとうございました!Nさんがいなかったら今ごろどうなってたか…』
〈ヒナタちゃんの運動神経を考えたら少なくとも全身打撲は免れないね〉
『怖っ!サラッと言わないでよ!』
「ふふ、気にしなくて良いよ。キミが無事で良かった」
そう言って流れる様に頬を撫でられる。すると雷士が尻尾でNさんの手を叩き落としてしまった。
『ちょ、何やってんの雷士ダメでしょ!?』
「大丈夫、痛くないよ。…その子はヤキモチを焼いているんだ。愛されているね、ヒナタ」
『や、ヤキモチ…?』
雷士はぷいっとそっぽを向いてしまってる。何でヤキモチ…いやいや絶対無いね!それよりも気になる事がある。
『あの、Nさんはどうしてここに?』
「…この古代の城は昔レシラムやゼクロムが眠っていた場所だから、ふと見に来たくなってね。それに…キミに会いたくて」
『あ、あたし?』
「タチワキシティでキミはイッシュの遺跡や神話を調べにきたと言っていただろう?レシラム達に興味があった様だし…だからここに来れば会えるかも知れないと思ったんだ。そうしたら本当に会えた」
嬉しそうに笑うNさん。不思議な人だ、見た目は大人なのに時々小さな子供の様な顔をする。
「まさか上から落ちてくるとは思わなかったけれどね」
『その節は諸々申し訳ございませんでした!!』
あたしの失態を思い出したかの様にクスクス笑わないで下さいNさん…!
「そうだヒナタ、調査とやらは出来たのかい?終わったのなら一緒に外へ出よう」
『あ…はい、もう大丈夫です!』
あたしはNさんと一緒に古代の城を後にした。うん、中々良い調査が出来たんじゃないかな?
「…ヒナタ、キミは…プラズマ団の言う通りにトレーナーとポケモンは離れ離れになるべきだと思うかい?」
『え?』
服についた砂を払っていたら唐突にNさんに問いかけられた。プラズマ団の唱える事…そうだなぁ、あたしは…
『…確かに、酷い事をする人からはポケモンを離した方が良いのかもしれません。実際あたしが住んでいたカントー地方にも悪い人間の集団がいましたから』
ポケモンを道具の様に扱い、傷付けるだけの人達。そんな人達にトレーナーになる資格なんて無いと思う。
『でもポケモンを心から大事にしている人達もたくさんいます。それに友達として、家族として、確かな絆を持っているポケモンとトレーナーを身近で見てきました。そういう人達の意思を無視して無理やり引き離す事は許せません。だからあたしは…プラズマ団に出会う限り彼らを食い止めようと思っています』
〈…僕達がどうしたいかは自分で決めるよ。その結果僕達はヒナタちゃんの傍にいる。これからもずっとね〉
『えぇ!?どうしたのどうしたの珍しくデレてるね雷士くん!』
〈アイアンテールまで3秒前〉
『ゴメンなさい!』
あたしの言葉をNさんはジッと聞いていた。一言も漏らさない様に…そんな風に見えた。
「…キミは彼に似ている…。キミ達のようなヒトとポケモンがいてくれて良かった。ボクにとってもポケモンはトモダチ…だから守りたかったのに、あの時のボクは随分回り道をしてしまったんだ」
あの時…とは、以前言っていたプラズマ団の王として君臨していた時の事だろうか。純粋で優しい彼を迷わせてしまったのは、多分プラズマ団の真の支配者。
「過ちに気付かせてくれた2年前のトレーナーやキミに出会えた事、本当に嬉しく思う。ボクは変わる事が出来たのだから」
あの優しい顔で笑うNさんにあたしも釣られて笑う。どうか、この人がもっと幸せになれます様に。そう強く思った。
〈!…ヒナタちゃん、今微かに叫び声が聞こえた…多分ポケモンの声だよ〉
『え!?』
「…!行こうヒナタ!」
聞こえた方向を頼りにNさんに続いて砂漠を走る。耳の良い雷士がポケモンの声だと言うならばきっとそうなのだろう。
怪我をしているのかもしれない、何かに襲われたのかもしれない。あたし達は声の主を探してリゾートデザートの奥地へと向かった。
to be continue…
prev | next
top
|