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『わぁ…!凄い、砂嵐が止んでる!』
〈地下と同じ状態なんだろうね〉
無事に古代の城へと辿り着き、早速中へ入ると殺風景だけれどどこか神秘的な空間が広がっていた。
時折頭上から落ちてくる砂の粒に、改めてこの場所が地下であると実感する。
『そうだ、どんどんメモしていかないとね!』
バッグからメモ帳とペンを取り出し、受けた印象や見たものを記録する。次にデジカメで周囲を撮影した。うん、綺麗に撮れてる!
『それにちゃーんとサンプル採取の為にハル兄ちゃんから借りてきたもんね!』
最後に小さな試験管に壁から零れ落ちた砂を少量入れてゴムの蓋をする。この砂の成分を調べれば、古代の城がいつ頃建てられたものなのかなど色々な事が分かるらしい。
『早く渡してあげたいな…調査が終わったら一度帰ろうか』
〈良いんじゃない?ハルマも待っているだろうしね〉
ハル兄ちゃんの研究の役に立てれば良いんだけど…。落とさない様にバッグの内ポケットの中へ大事に仕舞い込んだ。
〈どうするの?もう終わる?〉
『うーん…もう少しだけ奥に行ってみようか。何か見つかるかもしれないし!』
そうして下層へと繋がる階段に向かおうとした時、足が砂に捕らわれた。
『…ん?』
〈…!ヒナタちゃん!〉
そのままズブリと深く嵌まっていく感覚。雷士の声で分かった。これって…!
『流砂ぁああぁあ!?』
あぁ、あたしどうなってしまうのかな。
−−−−−−−−−−
『―――っ!!』
落ちている、ハッキリと分かった。流砂に呑まれ落下していく体。せめて雷士が地面に激突しない様にと引き寄せ抱き込む。
もう無理、結構高い!ギュッと目をつむり衝撃への時を耐える。
怖い…!そう思った時、聞き覚えのある声で誰かがあたしの名前を叫んだ気がした。
「ヒナタっ!!」
…あれ?痛くない…。覚悟していた来るであろう衝撃はなかった。と言うか…受け止められた?
恐る恐る目を開けると、安堵した表情を浮かべている綺麗な男の人があたしを見下ろしている。
長い黄緑色の髪、翡翠の瞳。この人は…
『…N、さん?』
そう呟けばニコリと微笑む彼。間違いない、タチワキシティで出会った不思議な人…Nさんだ。でもどうしてここに…?
そこでハッと気付いた。
(Nさんが受け止めてくれたんだ…!)
今のあたしはNさんに抱きかかえられている状態。いわゆるお姫様抱っこというヤツだ。
『わわ…!ご、ゴメンなさいNさん!重いですよね下ります!』
「…別に重くないのに」
〈名残惜しそうな声出してんじゃないよ電波〉
慌ててNさんに下ろして貰う。お姫様抱っこなんてされたの人生初めてだから何だか恥ずかしい。ていうか何で雷士はそんな毒吐いてんの、めっ!
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