long | ナノ







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そしてジュースを飲み終え4番道路に入ろうとした時、公園の奥から微かに女性の悲鳴の様な声が木霊した。


『…!?今、聞こえた?』

〈うん、人間の声だったね〉

〈あちらですヒナタ様!〉


波動を察知出来る蒼刃の案内で、真っ直ぐ声の主の元へと走る。まさか、まさか…!





「さぁ、俺達にポケモンを渡しな!」

「ポケモンをトレーナーから解放するのだ!」


嫌な予感は的中、本当にプラズマ団がいた。迫られている女の人は怯えた表情でチラーミィを抱き締めている。チラーミィも彼女の服をギュッと握り締め震えていた。

…やっぱり、プラズマ団が唱える様に人とポケモンは離れ離れになるべきだとは思えない。だって彼女とチラーミィはお互い好き合っているもの。あたしだって…雷士や蒼刃と離れるなんて嫌だから。


『ちょっとあなた達!その人から離れ…』

「ぐわぁっ!!」

「あっあちぃ!!」


…え、何事?


あたしが女の人を助けようと声を張り上げた瞬間、どこからか炎が現れプラズマ団員を襲った。…あれは、かえんほうしゃ?


〈テメェら…ウゼェんだよ!!〉


植木の後ろから飛び出して来たのは昨日のヤンキーガーディ。ていうか人間相手にかえんほうしゃとか中々容赦ないねこの子!


〈テメェらみてぇな人間を見てるとイラつくぜ…。群れりゃ強くなるとでも思ってんのか〉


鋭い牙と嫌悪感を剥き出しにしプラズマ団に迫る。この口振りかるすると…彼には行動を共にするような誰かはいないのだろう。確かに一匹狼のような感じはするしね。


「な、何だコイツ…!おい、追い払うぞ!」

〈何かにすがりつかなきゃ生きていく事も出来ねぇクソ野郎共が…!俺の前から消え失せろ!〉


プラズマ団がすがりついているもの…?高い能力を持ったポケモン達をトレーナーから解放し自由にするという彼らにとっての大義名分というやつかな。それと…以前Nさんが言っていた彼らを裏で動かす「指導者」の存在だろうか。


〈誰かと群れていないからこそ見えるものもある。あいつ、そういうタイプなのかもね〉


雷士が小さな声で呟く。あたしには上手く理解出来なかったけれど、先程のガーディの言葉を聞く限り確かにただの乱暴者ではないのかもしれない。

そんな風に感じ入っていたら、プラズマ団員が手元のボールからズルッグとズバットを繰り出すのが見えた。え、2対1!?そんなの卑怯だよ!

何事かと目を丸くする女の人にここはあたしに任せて下さいと告げる。すると軽く会釈をして走り去っていった。…よし、あたしも助太刀するよガーディ!


『蒼刃!ズバットにでんこうせっか!』

〈!?〉


進化した蒼刃のでんこうせっかはより激しさを増している。威力だけなら雷士よりも上だろう。油断していたズバットに直撃し吹き飛ばす。…ちょっと悪い事したけれど許してね。


「な…!何だお前、コイツのトレーナーか!?」

『違います!ただの通りすがりです!』

「じゃあ帰れよ!」


そう言われても見過ごす訳にはいかないんだよね!ガーディがこちらを驚いた顔で見ていたのでニッと笑い返した。


〈テメェらは昨日の…〉

〈勘違いするなよ、ヒナタ様のご命令でこの者達と戦うだけだ。お前を助ける為ではない〉

『まぁまぁそんな事言わないで蒼刃!ガーディ、あたし達も手伝うよ』

〈!テメェ…コイツの言葉が分かるのか〉

『うん!でもその話は後でね。今はとりあえずプラズマ団を追っ払うよ!』

〈ちっ…俺に指図するんじゃねぇ!〉


そう言うや否やかえんぐるまでズルッグへと突っ込むガーディ。あは、血の気の多い子だな…。


「!避けろズルッグ!」


しかし間一髪でかえんぐるまを避けられてしまった。そのままクルリと一回転したかと思うと、とびひざげりを繰り出す。

けれど上手はガーディ。すぐさまかえんほうしゃを繰り出し、空中でとびひざげりの体勢のまま身動きの取れないズルッグに浴びせかけた。

それをモロに喰らったズルッグは戦闘不能に陥る。やっぱりこのガーディはバトル慣れしているのかも…まるで蒼刃みたい。あ、それかケンカ慣れかな?


『さぁ、残りはズバットだけ!』

「くそ…っ!ズバット!エアカッターだ!」


エアカッターは確か2体同時に攻撃出来る技…急所に命中する可能性もある。落ち着いて対処しなきゃ!


〈はっ、こんなモン全部避けて…!〉


地面を蹴り上げようとしたガーディの足が僅かによろめく。痛みに顔をしかめている様子を見ると、昨日の傷が響いているのだと分かった。


(やっぱり暴れられても手当てしてあげれば良かった…!)


エアカッターが迫り来るが動けないガーディ。このままじゃ直撃してしまう…!何とかしなきゃ!


『…っ蒼刃!メタルクローでエアカッターを弾き返して!』

〈はい!〉

「何!?」


俊敏な動きで自分に放たれたエアカッターは勿論、ガーディに当たる筈だった攻撃も跳ね返す。さすが蒼刃!華麗な動き!

そのまま跳ね返された自分の技で戦闘不能になったズバット。さぁ、勝負はついたよ。


「しまった…!こんな失態があの方に露見したらマズい!」

「早くここから離れるぞ!」


慌てて2匹をボールに仕舞い走り去っていくプラズマ団。…今言った「あの方」というのが黒幕なのかな。


『お疲れ様蒼刃。凄かったよ!』

〈いいえ、全てはヒナタ様のご指示のおかげです!〉


またまた謙遜しちゃって!蒼刃の頭を撫でると嬉しそうに喉を鳴らす。そうだ、ガーディをポケモンセンターに連れていかないと!


『ねぇガーディ、昨日の傷治ってないんでしょ?センターで見て貰うから一緒に来て!』

〈うるせぇ、俺に構うな〉

『ダメ、痛そうにしてるじゃん。歩くのが辛いならあたしが抱えていくし!』

〈こんなモン平気だっつってんだろ!!〉

『っ!!』


昨日と同じ、手を差し出したら思いっきり噛まれた。今度は少しだけ血が出てしまってる。


〈貴様…!〉

〈良い度胸だね…。もっと大怪我にしてあげようか?〉

『大丈夫だよ2人共!…ガーディ、今度はどれだけ噛まれてもあなたを離さないよ。引きずってでもセンターに連れて行くからね』

〈…っクソ、面倒くせぇ奴らだ。…勝手にしやがれ〉


諦めたかのように口を離して背を向けたガーディ。お腹に手を回して抱き抱えても抵抗はしなかった。…ていうか…


『モッフモフ!!可愛い!!手触り最高ぉおおお!!』

〈おいテメェ流血しながらニヤニヤするんじゃねぇよ気持ち悪ぃな!!〉

〈貴様ぁあああ!ヒナタ様に何という口の聞き方を!!〉

〈ていうか流血させたの気持ち悪いって言ってる本人だからね〉


…その後センターでジョーイさんにあたしの手当てまでして貰いました。


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