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コンビナートで出会ったNさんと言う不思議な青年と別れ、あたし達は予定通りライブハウスへと向かっていた。
『お疲れ様蒼刃!センターで体力回復はしたけど、まだ疲れてるだろうからボールで休んでて?』
〈分かりました。お気遣いありがとうございます、ヒナタ様〉
バトル続きだった蒼刃をボールへ入れて再びライブハウスへと歩く。
「もうホミカのライブ超楽しみー!早く見たいね!」
「そうそう!マジ激熱ー!」
『おぉ…これ皆ライブに行く人達なのかな。凄い人気だねー』
通りを歩く女の子達は煌びやかに化粧を施し、楽しそうにはしゃいでいる。心無しか露出の激しい子が多いのはライブの開放感というものを表しているのだろうか。
そしてもうじき会場に着くという時、ふと視界に入った細い脇道を見ると白髪の女の子の姿があった。
脇道は塀に囲まれかなり人目につきにくい。こんな所にしゃがみ込んで何をしているんだろう…。気になってしまったあたしはソッと近付いていった。
「あーもうどうしよ…よりによってこんな時にー!」
『…?あ、あの…』
「!?」
背後から声をかけられたこの子の方がビックリしただろうけれど、あたしもビックリした。何故なら振り向いたこの女の子…
ポスターの写真そのまんま、タチワキシティのジムリーダーであるホミカちゃんだったから。あ、ちゃん付けなのはプロフィールを見た時にあたしより年下だと知ったからです。
「…イイ、イイかも」
『え?』
「うん!アンタなら出来る!アタシと一緒に来て!!」
『えぇえええ!?』
あたしを凝視していたかと思うと突然腕を掴まれてそのまま猛ダッシュ。え、何どうなってんのぉおお!!
ボールの中にいた蒼刃はまだ良いけれど、雷士はいつも通り頭上だったから突然の事にかなり驚いていた。
ちなみに、この小さな体のどこにそんなと言うくらいホミカちゃんの力は強かった。あぁ、これが楽器を扱う人のパワーなんだね…。
−−−−−−−−−−
彼女に連れられて入ったそこはどうやらライブハウスにある地下部屋。色んな機材や楽器、衣装が置いてあってここでライブの準備をするみたい。
「悪いね突然連れて来ちゃって!実は今すごく困っててさ…」
『あ、みたいだね…。何があったの?』
「うん…今日アタシのバックで演奏する筈の2人組が超渋滞に巻き込まれてライブに間に合わないって言い出してさ。今から代わりのミュージシャン呼ぶのも無理だしどうしようって思ってたんだ」
なるほど、それは一大事。たった一人でステージに立つのも味気ないよね…。でもそれでどうしてあたしを連れて来たのだろう?
その疑問はホミカちゃんの放った言葉で更に深まる事になる。
「でもアンタを見つけた!ね、アタシと一緒にライブに出てよ!」
『…え、』
えぇえええぇええ!?
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