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『わ、明るい…!ほら雷士も起きて!』
ビリジオンに乗せてもらいながら外に出ると太陽の光に眩く照らし出された。意外とまだ日は高かったんだ…。本当に、長かったけれど短かったような気もする。雷士ももぞもぞとしながら顔を上げた。
「さて…コバルオン達とはここでお別れかな」
『そうですね。乗せてくれてありがとうございました!』
〈とんでもありませんわ、わたくしにとっても大変充実したひと時でしたもの!〉
〈え、何この状況?〉
〈知らねぇほうがいいぞ〉
屈んでくれたビリジオンにお礼を言って降りると再び頬ずりされた。ふふ、すごいポケモンでお姉様なのにこういうところは可愛いなぁ。
〈なぁヒナタ、オレもう一度コバルオン達と修行しようと思うんだ。それで自信をつけたらキュレムに挑む!〉
『そっか…そうだね、清芽くんなら大丈夫だよ!』
頭を撫でると嬉しそうに擦り寄ってくれた。キュレムさんと清芽くんの本気のバトル…きっと素晴らしいものになるだろう。出来ることならぜひ立ち会いたいものだ。
〈ヒナタ、そしてNとトウヤ。偉大なるイッシュの英雄達よ。この地はお前達のおかげで無事守られた。我ら聖剣士からも礼を言わせてくれ〉
「それはこちらのセリフだよ。キミ達もいてくれなければこの結末は迎えられなかっただろう。昔からいつもヒトの欲に巻き込んでしまってすまない…。でも、力を貸してくれて本当にありがとう」
「そして君達が心を削らなくても済むように、俺達人間ももっと努力していくと約束するよ。どうかゆっくり休んでくれ」
〈感謝する。…では、またどこかで〉
〈必ずですわよ!必ずまたお会いしましょうねヒナタさん!〉
〈あぁもういいからさっさと行くぞ!〉
〈ヒナター!オレ、ヒナタのことずっと大好きだからな!〉
『あたしもだよ!みんな、ありがとう!』
名残惜しい気持ちを押し殺して別れの挨拶をする。そしてコバルオン達は風のようにこの場を走り去って行った。
次に会えた時、清芽くんは一体どれほどの成長を遂げているのだろう。あたしの想像なんて及ばないくらいかもしれない。
「ヒナタ、疾風は疲れているだろう?ボク達が近くのポケモンセンターまで送って行くよ」
『えっ、いいんですか?』
「それくらい問題ないさ。さっきはゼクロムに乗ったから、次はレシラムに乗せてもらったら?」
〈いいだろう、さぁ乗れミカン娘。今日の褒美だ〉
『わぁ…!ありがとうございます!』
原型に戻ったレシラムさんの純白の体毛が風に靡いてキラキラ輝いている。ゼクロムさんよりも柔らかくてふわふわそう…。何だか今日は至れり尽くせりで申し訳ないなぁ。
〈ちゃんと安全飛行してよね〉
〈相も変わらず口が減らんなタンポポ小僧。まぁいい、今の私は寛大だからな〉
『すみませんレシラムさん…』
「ははっ、じゃあ出発しようか」
ゼクロムさんに跨ったトウヤさんが隣を飛んで、あたしはNさんと一緒にレシラムさんに乗っている。何この豪華すぎる光景。なるべく一般人に見つからないように高いところを飛んでもらわないといけないかも…。
贅沢だなぁと思いつつ、そんなことを考えながらポケモンセンターに向かってもらったのだった。
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