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そして彼から語られた話はどれも印象的だった。
Nさんは幼い頃森でポケモン達と共に生活していたという事、その後拾われてプラズマ団の王に奉り上げられた事、そして…伝説のドラゴンポケモン達に会った事があるという事。
正直あたしにとってはプラズマ団云々よりドラゴンポケモンの方が衝撃的だったのだけど。
『れ、れ、レシラムにゼクロム!?あの、それって本当ですか!?』
「勿論、しっかりとこの目で見たよ」
そう言って微笑むNさん。胡散臭さを感じないその笑みは真実を物語っていた。
「レシラム達に興味があるのかい?」
『勿論!だってあたし、考古学者の兄を手伝う為にイッシュの遺跡や伝説を調査しに来たんですもん!』
「…そう…」
Nさんが優しく腰のボールを撫でたけれど、その時のあたしはそれがどんな意味を持っていたのかなんて知る由も無かった。
「そろそろ行くよ、ヒナタ。キミの足止めをして悪かったね」
腰掛けていたベンチから立ち上がり帽子をかぶり直すNさん。風に靡く彼の長い髪はやっぱり綺麗だ。
『…あの、Nさん。どうして会ったばかりのあたしにここまで話してくれたんですか?』
自分の過去やレシラム達の事…ましてやプラズマ団の事なんて友人と呼ぶにはあまりにも浅いあたしに何故、ずっとそれが気になっていた。
「…そうだね、ボクにも良く分からないけれど…キミに聞いて欲しかったのだと思う。キミは他のヒトとはどこか違う気がするから」
『違う…?』
ニコリ、またNさんが微笑む。そのままスルリとあたしの頬を撫でた。
「つまり、キミに興味があるという事だよ」
…興味?興味って…え、あたし何か面白い話なんてしたかな。それともやっぱりポケモンと会話出来るからとか?
そんな事を考えている内にいつの間にかNさんの姿は消えていた。去る時も一瞬なんだねあの人…。
〈〈…殺す…!〉〉
『!?今何か物騒な声が聞こえたけど気のせいだよね2人共!?』
−−−−−−−−−
今日出会ったヒナタは不思議な子だった。ボクのようにトモダチの言葉が分かるのもそうだけれど、綺麗で純粋で…「彼」とはまた違った強さを感じさせた。あぁ、それにあの夢の中のヒトと同じ髪の色をしていた気がする。だからなのか、初対面の筈なのに何故かとても懐かしい気持ちになった。
「…また会おうね、ヒナタ」
次に会う時はもっとキミのことを知れるだろうか。
僅かにざわめいた胸の内の意味に気付かないまま、まだ日の高い空を翔けていった。
to be continue…
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