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キュレムさんの技によって雷士やNさん達は体の半分以上まで凍結してしまっている上、かろうじて上半身が無事な氷雨と紅矢もその状態では背後から降りかかる岩片に対応出来ない。このままでは皆が大怪我を負ってしまうかもしれない。人間である2人は氷に覆われているだけでも命に関わってくるというのに。状況に気付いたゼクロムさんが雷士達を守る為に踵を返す。でもあれでは間に合わない。
もうダメ、…そう思った時だった。
〈!?〉
突如現れたハイドロポンプと思しき技が皆を盾のように守りながら岩片を弾いていく。繰り出されたであろう方向に目を向けると、そこに立っていたのはケルディオくんとコバルオン、そして姿や雰囲気は似ているけれど見たことのない2体のポケモンだった。
〈ま、間に合ったぞ…!〉
〈間一髪だったな!〉
ハイドロポンプはケルディオくんの技だったんだ。良かった…所々傷ついてはいるけれど、大きな怪我は無さそうだし体力も残っているみたい。あたしが心の内で安堵していると、キレイな緑色の体をしたポケモンとバッチリ目が合った。
〈…ふ、うふふふふ…やっと巡り合えましたわ…!あちらの可憐かつ華やかな向日葵のようなお嬢さんがヒナタさんですわね!?〉
〈そういえば一番やべぇのコイツだったな〉
〈すまんヒナタ…さすがにビリジオンからは守ってやれそうにない〉
ん?な、何だろうあの視線は…。緑色の美人さんはビリジオンって言うのかな。きっとあの2体がコバルオンと同じ聖剣士なのだろう。良かった、ずっと心配していたケルディオくんと再会出来たんだね!
「これはこれは、キャストが勢揃いといったところですかな?」
〈アイツ…!皆、アイツが悪いヤツだぞ!今もヒナタにひどいことしてる!〉
〈えぇ、分かっていますわよケルディオ。乙女に無体を働く低俗な輩には死で罪を償って頂くしかありませんわね〉
〈言い分には同意だがビリジオンをヒナタ様に近付かせるのは反対だ!〉
〈まぁまぁ、その辺りのことは終わってから考えましょう〉
ゼクロムさんを含め味方をしてくれる伝説のポケモン達が現状5体。全世界のポケモン研究者やトレーナー達が歓喜する光景だろう。でも状況が良くなったとは決して言い切れない。レシラムさんを取り込んだキュレムさんの力はまだまだ計り知れないのだから。
「ゲーチス様、これはまたとない好機です。ここに集ったポケモン達を一掃すればキュレムの力が確固たるものとして証明されることでしょう!」
「その通りですね。ですが1匹ずつ相手をするのは面倒ですし…欲しいのはゼクロムのみですから一撃で済ませるとしましょうか」
(い、一撃で!?)
あたしはその言葉に耳を疑った。そんなことさすがに出来るはずがない。…そう、思っていた。キュレムさんが力を溜め込み始めたその姿を見るまでは。
(何、これ…!?)
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