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気を取り直して蒼刃と雷士交代でバトルを繰り返しレベルアップを図っていると、どこからか視線を感じた。
『…ん?』
「…」
…あの綺麗な男の人は誰だろう。それにいつの間にコンビナートに来ていたのだろうか。
(…ま、いっか。きっと雷士が珍しいから見ているだけだろうしね!)
目が合った気がしたけれど、何事も無かったかの様にバトルを終えてこちらへ戻ってくる雷士に視線を戻す。すると次の瞬間肩を小さく叩かれた。
「ねぇ、キミ」
『わぁっ!?び、ビックリし…たってえぇええいつの間にこの近距離!?』
肩を叩いたのは先ほどの男の人。あれ、おかしいなさっきまでもう少し遠い所に立ってたのに瞬間移動!?
「あ、す、すまない…驚かせてしまったね。そんなつもりは無かったのだけれど…」
『い、いいえ!あたしも大袈裟でしたゴメンなさい!』
思い切り頭を下げてそのままチラリと彼を見上げる。あたしより頭一つ分背の高い彼は近くで見ると更に美青年だった。
〈何だ貴様は…!ヒナタ様に馴れ馴れしく話しかけるな!〉
『そ、蒼刃!』
蒼刃が何故か鋭い目つきで彼を威嚇する。雷士も蒼刃ほどではないけれど頬から火花を散らして警戒していた。慌てて制しようとした時、蒼刃へ向けて彼が発した言葉にあたしは衝撃を受ける事になる。
「…そうか、この子はヒナタと言うんだね?」
『…え?』
今、あたしの名前を言った?どうして…名乗ってもいないのに。
「ふふ、驚いているみたいだね。ボクの名前はN、ポケモンの言葉が分かるんだよ。…キミと同じ様に、ね」
…この人は、一体何者?
−−−−−−−−
「うわぁ…ピカチュウかぁ。まさかこんな所で出会えるなんて思っていなかったよ。カントーへはまだ行った事が無いし今度足を運んでみようかな」
〈ちょっとヒナタちゃん、このフワフワした人何とかしてくれない?〉
『いやいや意外と仲良くなれるかもしれませんよ雷士くん』
彼…Nと名乗ったこの人はどこか幼い子供の様な印象を受けた。今も物珍しいのか雷士をペタペタ触ったり撫でたり高い高いしたりしている。
〈仲良くって…何でそう思うわけ〉
『だって雷士もフワフワぽわぽわしてるじゃん。まぁ雷士はめんどくさがり的な意味でぽわぽわしてるけど』
〈ヒナタちゃん以外にこんなベタベタ触られたくないんだよ僕は!〉
『…え、今雷士デレなかった?あたしの都合の良い空耳?雷士が全然あたしに優しくないからとうとう幻聴まで聞こえる様になっちゃった?』
〈お気を確かにヒナタ様!雷士がデレる筈ありません!〉
〈ちょっと何勝手に決め付けてんの蒼刃コラァ〉
「ふふ、キミ達は本当に仲が良いんだね」
あたし達のやり取りにクスクスと上品に笑うNさん。…やっぱり本当に雷士達の言葉が聞こえているらしい。そうで無ければこんな反応は出来ないもの。
「ねぇヒナタ、キミはいつからポケモンの声が聞こえる様になったんだい?」
『え?えっと…正直分からないです。多分物心ついた時には聞こえていたんじゃないかと…』
「…そう、じゃあボクと一緒だ」
Nさんは嬉しそうにニコリと笑った。
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