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―――…夢を見た。
幼いボクが霧に包まれた真っ白な世界に立っている夢。どうしてそんなところにいるのかとか、そもそもそこがどこだったのかもよく思い出せない。
けれどもそんなボクの頭に誰かの手の平が乗せられた。最初は手首までしか見えなかったが、段々霧が晴れていくと女性の形が姿を現す。
霧が邪魔して顔はよく見えない…。たった1つだけ覚えているのは太陽と同じ色をした柔らかそうな髪だけ。
あの暖かい手を持つヒトは、一体誰だったのだろうか。
−−−−−−−−−−
『よっし、タチワキとうちゃーく!!』
あたし達はヒュウくんの助言通りタチワキシティへと来ていた。腕の中の蒼刃もキョロキョロと街並みを見渡している。ちなみに雷士は相変わらず爆睡中。
〈ヒナタ様、ここは海が近いのですね〉
『そうだね!まぁ船が出てるっていうくらいだし…ん?』
ふと塀に貼ってあるモノが目に入った。近くへ寄って見てみると、バンドのライブ告知らしい。
『わ、ボーカルってここのジムリーダーなんだ!凄いねー見てみたいかも!』
ポスターにはタチワキシティのジムリーダーと書かれた少女の写真がデカデカと載っている。そして周りにはドガースやベトベター…。一般的な少女とは少し違いこの子は毒タイプが好きな様で、常識に囚われない雰囲気を醸し出している所に興味が湧いた。
『ね、あたしこの子のライブ見たい!良い?』
〈ヒナタ様がお望みならば俺はどこへでもお供します!〉
え、何だこのイケメンは。サラリと恥ずかしい事言っちゃうんだね蒼刃くん…!
『と、とりあえずライブは夕方からみたいだしコンビナートへ行ってみようか!』
コンビナートにはトレーナーもたくさんいるみたいだから良い経験になる筈。蒼刃のレベルアップもしちゃうもんね!
…なーんて、思っていたあたしのバカ。
〈?どうされましたヒナタ様?〉
『…蒼刃…あなた強すぎ…!』
〈意外と容赦ないね。まぁバトルだし当然っちゃ当然だけど〉
そう、蒼刃は破壊神かってくらい強かった。さすがサンギ牧場の番人の名は伊達じゃないね…。
『ちょっとほら、あの短パン小僧くんこっちを化け物を見るかの様な目で見てるじゃん。軽く生まれたての小シキジカの様に震えてるじゃん』
〈…ヒナタ様は、俺がバトルに勝つ事が嬉しくは無いのですか…?〉
『やっだなぁああ!なーに言ってんの蒼刃くん嬉しいに決まってるじゃん!?むしろどんどん勝って良いよ!これ以上出ないってくらい賞金むしり取って来てくれていいからそんなウルウルした目で見ないでぇええ!!』
〈うるさいよヒナタちゃん〉
どうやらあたしは蒼刃のシュンとした顔または涙目に弱い様です。
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