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〈!伏せろケルディオ!〉
〈うわっ!?〉
ケルディオの背後から襲いかかってきた敵をいち早く反応したゼクロムが撃退する。突然現れた聖剣士達への動揺も落ち着きを見せ、プラズマ団は再び臨戦体勢に入ったようだ。そりゃそうだよね、今は戦闘中。いつまでもぼーっと待ってはくれない。
〈まぁ、ケルディオったら。ゼクロム様のお手を煩わせるなんて…いかなる時も気を抜いてはいけないと教えましたわよ?〉
〈いや抜かせたのはお前だろうが〉
〈いいんだテラキオン!オレの反応が遅れたのは事実だから…でももう隙は見せないぞ!〉
〈…ふむ、敵を全て退けるには今しばらくかかるか。レシラム様方、どうぞお早く。この場は我等にお任せ下さい〉
〈えぇ、麗しき乙女を攫い人質にする外道共にはわたくしが然るべき報いを与えますわ〉
〈うわっ、ビリジオンがいつもより燃えてるぞ…!〉
〈あー…まぁやる気が出たなら結果オーライか?というわけだ、お前らにも先へ進む理由があるんだろう。さっさと行きな〉
そう言ってニッと笑ったテラキオンは嵐志に、そしてヒナタちゃんのピンチを知りやる気を出したビリジオンは澪に似ている気がした。まぁテラキオンの場合は嵐志のようにチャラくはないのだけど。でも頼もしい事この上ないね。
〈N、トウヤにも状況を伝えて〉
「うん!トウヤ、この場はコバルオン達が引き受けてくれると言っている。だからボク達は先を急ごう!」
「なるほど、そういうことか。ありがとう皆、助かるよ」
トウヤの言葉にコバルオン達が少しだけ微笑んだ。そういえばトウヤは昔彼らに会ったことがあるんだっけ。2年前の悪事を阻止したということも知っているだろうし、トウヤに対してはある程度の信頼があるのかもしれない。
〈皆!オレはコバルオン達とここに残って戦うぞ〉
「えっ?」
「N、どうしたの?」
「ケルディオもここに残るって…。でもいいのかい?キミは元々キュレムを救う為に動いていたのだろう?」
〈そうだけど、でも…この場で戦うことだってキュレムとヒナタを助けることになるから。それにオレ、聖剣士の皆にどれだけ強くなったのか見てもらいたいんだ!〉
ケルディオがコバルオン達に向けて笑みを浮かべる。するとその意志を汲んだのか、彼らもまた小さく頷いた。
〈そうか…分かった、頼んだぞケルディオ。ヒナタ様のことは俺に任せろ!〉
〈イヤ僕達も一緒に行くんだけど〉
〈やれやれ…蒼刃も大概歪みませんねぇ〉
〈はっ、テメェもな〉
「ふふ…トウヤ、雷士達にも少し余裕が出てきたみたいだよ」
「だね、様子で分かったよ。じゃあ…プラズマ団にはさっさと道を開けてもらおうか?」
トウヤが奥に続く道を塞いでいるプラズマ団を睨み付ける。すると蒼刃が一歩踏み出し、グッと腰を落としながらNに声をかけた。
〈N、トウヤを連れて少し下がっていろ。ヒナタ様へ続く道は俺が切り拓く!〉
〈イヤだから、僕達もいるって〉
〈今の蒼刃には何を言っても無駄ですよ。紅矢、君もいけますね?〉
〈はっ!誰にモノ言ってやがる〉
「ちょ、ちょっと待つんだキミ達!せっかく体力が回復しつつあるのだから、レシラムやゼクロムに任せて消費を抑えた方が…!」
〈ご心配なく。コバルオン達が背後を固めている今ならば、道1つ開ける程度の力は僕達にとっても微々たるものです。それにレシラムとゼクロムの力は本来キュレムと対峙する時まで温存しておくものですしね〉
〈…うむ、確かにその方が賢明か。分かった、頼んだぞそなた達〉
〈ふっ、私の為に働くとは結構な心意気ではないか〉
〈んだとコラテメェ…!〉
〈まぁまぁ落ち着きなさい、今はヒナタ君の元へ進むことが先決です。…さぁ、いきますよ!〉
氷雨の合図を皮切りにして、僕達4匹が一斉に攻撃を放つ。そのパワーが1ヶ所に集結し膨れ上がって小規模の爆発を起こした。
「ぅわ…っ!クソ、煙で何も見えない!」
「まずいぞ、奴等を行かせるな!」
〈皆の邪魔は許さないぞ!〉
「ぐぁっ!?」
僕達が煙に紛れてその場を突破しようとした時、辛うじてそれを捕らえた団員がポケモンをけしかけようとする。しかし素早く反応したケルディオがアクアジェットを繰り出し団員諸共吹き飛ばしてしまった。
〈ケルディオ…!〉
〈皆!ヒナタとキュレムを頼んだぞ!〉
〈あぁ、任せておけ!ヒナタ様は俺が必ず助け出す!〉
「はいはい、分かりましたから早く行きましょう」
〈テメェいつの間に擬人化したんだよ〉
「原型のままでは地面を走れませんからね」
それは質問の答えになっていない気がするけれど…相変わらず氷雨は抜け目ないね。というかレシラムとゼクロムも知らない間に擬人化しているし。まぁ彼らが土煙に紛れようとするなら原型では大きすぎるし、擬人化するのも当然といえば当然なんだけどさ。多分僕達が攻撃した直後くらいに人型になったのだろうけど、それにしても全然気付かなかったよ。
「――――頼んだぞ、お前達」
プラズマ団の間を駆け抜ける瞬間、純白の長髪を靡かせたレシラムが呟いた。独り言のような小さな声だったけれどコバルオン達にはしっかり届いたらしく、3匹が同時に咆哮してそれに答える。
こちらの身まで震わせるようなその力強い声を背に、僕達は最奥へと走り出した。
to be continue…
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