long | ナノ







3

気を取り直して早速中に入った訳だけど…洞穴内というだけあって薄暗く湿気が充満している。はぁ、ただでさえ跳ねた毛先が更にうねってしまう…。


「なぁヒナタ、プラズマ団ってどんなヤツらなんだ?」

『え?うーん、そうだなぁ…多分あたし達人間にとっていい人達、とは言えないと思う。大好きなポケモンと無理やり引き離そうとするんだからね。でも…、』


実際は、どうなのだろう。あたし自身はプラズマ団のやり方は許せない。でもカントー地方でのロケット団のように、ポケモンを道具として扱う人達も存在するのは事実だ。だからプラズマ団の言う人間をポケモンから解放する、ということも全く分からない訳ではない。

それにロケット団までとは行かなくても、あたしみたいな普通のトレーナーだってバトルの際はポケモン達を酷使することだってある。プラズマ団が目的の為に取る無茶苦茶な方法は絶対許せないけれど、ならポケモン達の自由はどこにあるのだろうか。


〈何らしくないこと考えてるの。〉

『…っえ…?』

〈僕達は逃げようと思えばいくらでも逃げられるんだよ。人間よりもずっと力があるからね。でもトレーナーがいるポケモン達の殆どがそうすることをしないのは、そのトレーナーのことが好きで自分の力を尽くしたいから。だから僕達もヒナタちゃんの傍にいる。〉

『雷士…。』

〈君のことが好きだから、君の為に力を奮う。それを選んだのは僕達自身だ。つまり、僕達の自由はそこにあるんだよ。〉


雷士はあたしの頭に上半身を乗せているから表情を見ることは出来ないけれど、微かに微笑んでいるような気がする。そしてあたしの口元も同じように緩んだ。

どうして雷士はあたしの考えていることが分かるのだろう。そう聞けばいつものように〈君の顔に書いてある。〉と答えた。やっぱりそうなのかな、でもそれだけじゃない気もするのが何だか嬉しい。


「…ヒナタと雷士は、仲良しなんだな。」

『えへへ、こう見えても相棒だからね!』

〈それどういう意味。〉

「そっか…いいな、雷士…自分だけの、名前か…。」

『…ケルディオくん?』


小さな声で呟いた彼は寂しそうで、そして少し悔しそうな顔をした。何を思っているのか測りかねるその表情はケルディオくんの無邪気な笑顔には似合わない。一体どうしたの、と声をかけようとした時。


「これはこれは!いつぞやの興味深いトレーナーさんではありませんか!」

『…え?』


突然洞穴内に響いたのはよく通る低い声。思わずお腹の奥がビリビリと震えたような気がする程に圧倒される。

これは、この声は。あたしにも聞き覚えがあった。声がした方を向くと、視界に映ったのは洞穴に似つかわしくない白衣。



『…アクロマ、さん?』



そう、以前ホドモエシティで出会った不思議な科学者、アクロマさんだった。



to be continue…



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