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ポケモンセンターの1階にある食堂へ行くと色々なトレーナーやポケモン達が憩いの時を過ごしていた。あたし達も空いている席を探し腰を下ろす。
『ん〜!このオムレツ美味しー!』
〈ふふっヒナタ様、ケチャップが口元についていますよ〉
〈…お母さん?〉
蒼刃が小さな手であたしの唇の端を拭ってくれる。あぁもう胸キュン…!雷士が呟いた通り蒼刃には母性があるのかもしれない。
『よーしあたしもお返し!はい蒼刃、あーん!』
〈〈!!??〉〉
…あれ、何か今空気が固まったような。え?何で?
行き場を失ったオムレツを乗せたスプーンが虚しく揺れる。ちょっとちょっとノリが悪いよ、と蒼刃を見たら顔を真っ赤に染めていた。
『…蒼刃?顔赤いけど…まさかまだ傷が痛むの!?』
〈い、いえ!決してそういう訳ではないのですが!ただ、その…っ〉
慌ただしく右往左往する蒼刃の赤い瞳が何を訴えているのか察する事が出来ず、隣に座っている雷士に助けを求めたらいつもは眠たげなタレ目が何だか不機嫌そうだった。
『ん?雷士も欲しいの?』
〈…ヒナタちゃんのバカ〉
『えぇええストレート!!』
あたしが一体何をしたと言うんだ…。思わず目から涙が伝いそうになった時、突然背後から声をかけられた。
「あー!昨日のヤツ!」
…あれ、デジャヴ。
―――――――
「いやーにしても昨日は本当サンキューな!お前禄に礼も言わせてくれねぇまま行っちまうから探したんだぜ?」
『ほんっとゴメン!この子が怪我しちゃったから急いでて…』
「まぁそれなら仕方ねぇな!あ、俺ヒュウってんだ、よろしくな!」
『あ、うん!あたしはヒナタ、よろしくねヒュウくん!』
そう、昨日牧場で出会ったトゲトゲくんだ。ハーデリアを必死に探していた優しい男の子。話を聞くと、どうも彼は何か理由があってプラズマ団を探しているみたい。
「ヒナタはこれからどこへ行くんだ?」
『ん〜…とりあえず古代の遺跡があるっていうリゾートデザートを目指すから、まずはヒウンシティに行かないと』
「あ、だったらこの先のタチワキシティに行けよ。船が出てるからヒウンに行けるぜ!」
『本当!?わーありがとうヒュウくん!』
見た目はキツそうだけどやっぱりヒュウくんは優しい!友達になってくれないかなぁ。そんな事を思っていたらヒュウくんの方からライブキャスターに番号を登録しないかと言ってくれた。
〈…ねぇ蒼刃、何かコイツ馴れ馴れしくない?〉
〈全くだ。ヒナタ様に不埒な真似をしたら即張り倒してやる〉
ん?雷士と蒼刃が何やら物騒な会話をしている様な気がしたけど…まぁ良いや。早速お言葉に甘えて番号を交換した…その時、
「あ―――っ!!ひゅ、ヒュウが女の子ナンパしてるぅううう!!」
『!?な、何?』
「…うわ…めんどくせぇのが来た…」
突然ヒュウくんを指差し信じられないと言った顔でこちらを凝視するツインテールの女の子。そして猛スピードでこちらに走り寄ってきた。
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