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…と、意気込んで出発したのはいいものの。
〈ご、ゴメン、ゴメンねマスター…!ボクが、軟弱だから…っ〉
『いいの疾風は悪くない仕方ない!だからウルウルしないでお願いだから!!』
〈何でヒナタちゃんまで泣きそうになってるの〉
だって疾風が大きい目に涙を浮かべて謝ってくるんだもん、こっちまで貰い泣きしちゃうよ!
何故あたし達がこうして未だフキヨセシティで立ち往生しているのかというと理由はこうである。
疾風に乗ってネジ山を越えようとした所まではよかったけれど、何故かネジ山上空が猛吹雪で…。セッカシティ側は雪の多い所らしいから多分それのせいじゃないかと思う。
で、タイプ的にも寒さに弱い疾風は吹雪で視界も悪いし翼にも雪が被って上手く飛べなくなってしまった。これ以上先に進むのは危険だと判断してフキヨセまでまた戻ってきたというわけです。
『ね、大丈夫だから泣かないで?あの吹雪じゃ仕方ないよ!』
〈う、ごめ、ゴメン…っ〉
〈空がダメなら山の中抜ければいいだけの話でしょ、気にする必要ないよ〉
雷士の無表情な慰めにやっと落ち着いたらしい疾風。涙もろい所はビブラーバの時から変わらないなぁ、まぁそんなところも可愛いのだけど。
『そうそう、セッカシティに行く方法は他にもあるんだからね。ありがとう疾風、ひとまずボールの中で休んでて?』
〈ん…ありがとう、マスター〉
最後に涙を拭ってふにゃりと笑った疾風はボールに入っていった。
さて…雷士は山の中を抜ければいいって言ったけれどそもそも通れるのかな?確か今はソウリュウシティとセッカシティを繋ぐ橋は工事中だし、フキヨセシティから抜ける入り口も通行止めだった筈…。
一体どうしたものか。
ネジ山の入り口付近で腕組みして悩んでいると、背後から肩をポンと叩かれた。
「…あ、やっぱりヒナタちゃんだ!」
『…!フウロちゃん!』
そこにいたのはニッコリ笑うワインレッドの髪をした美少女、フウロちゃんでした。
−−−−−−−−
「久し振りね、ピカチュウを乗せた後ろ姿でもしかして…と思ったら本物だった!」
『ねー、会えて嬉しいよ!』
「そうだヒナタちゃん、以前頼まれたお墓なんだけど…もうしばらくしたら完成するの。まだ詳しい日にちは未定だけど、そう遠くない内に連絡出来ると思うわ!」
『本当!?ありがとうフウロちゃん!待ってるね!』
よかった、疾風のお母さんのお墓ちゃんと建ててもらえるんだ。疾風と一緒にお参りしないとね…。
「それで…ヒナタちゃんどうしてあんな所にいたの?」
『あ、えっとね…あたしセッカシティに行きたいの。最初は飛んで山を越えようとしたんだけど凄い吹雪で、前に進めなくなってここまで戻ってきたんだ。それでネジ山を中から抜ける方法しかないと思ったんだけど、通行止めだしどうしようと思って…』
「そっか…確かにセッカシティに近付くと吹雪が凄いもんね。私の飛行機もかえって危険だし…、」
フウロちゃんも同じようにうんうん唸り始めた。うぅ、困らせてゴメンね…!
でも彼女は少し考えた後、何か思い付いたのかパァッと表情を明るくし手を叩いた。
「そうだ通行止め!それを解除しちゃえばいいのよ!」
『え!?そんなこと出来るの!?』
「うん、ジムリーダーの私なら街も許してくれるわ。通行止めの理由はホドモエシティとネジ山を繋ぐ坑道を引く工事の為なんだけど…フキヨセ側からなら邪魔にはならないだろうし!」
うわぁジムリーダーって凄い…!フウロちゃん頼もしい!
「そうと決まればどんどん進んで!私は他の一般人が入らないようにまた看板を立てておくから」
『う、うん!ありがとうフウロちゃん!』
「気にしないで、また来てね!」
フウロちゃんと別れネジ山の入り口から中へ。いやー持つべきものは友達だね、ジムリーダー様万歳!
『ネジ山かぁ…化石とかも見つかるらしいからハル兄ちゃん喜ぶかもね』
ネジ山内部をキョロキョロ見渡していると、ふと視界に入ったのは岩陰に落ちていた帽子。…落とし物?
何となく気になったので近付いて拾い上げる。すると雷士があたしの髪をクイと引っ張った。
〈…ねぇヒナタちゃん、あれ〉
『ん?』
雷士が指差した方を見ると…1人の男の人が、倒れていた。
…あれ、じゃないよ雷士ぉおおお!!大変じゃんレスキューレスキュー!!
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