long | ナノ







3

疾風に跨がり優雅な空の旅。飛べるって何て便利なんだろう…!でも実際飛んでもらう疾風には謝っておかなきゃね。


『ゴメンねー疾風、バトルの後なのに乗せてもらって…』

〈う、ううん、体力は回復したし大丈夫だよ。それにボク、ずっと言ってたでしょ?こうしてマスターを乗せて、飛びたかったって!〉

『うわぁああ疾風可愛いぃいい!!』

〈わ…っえへへ、苦しいよマスター〉


あぁもう本当疾風ってば可愛すぎ!思わず太く長い首に抱き付くと、衝撃に驚いていたけど笑って許してくれた。


〈死にたくないなら大人しくしてなよヒナタちゃん〉

『痛っ!てかキツっ!何かいつもよりキツかったんだけど何で!?』

〈何となく〉


出た、雷士お得意の無表情&尻尾ビンタ。空の上でも歪みなくかましてくるね…あたしは悲しいよ。

とまぁこんなやり取りをしながらフキヨセへ向かった訳だけど…フライゴンの飛行テクニックは中々凄いらしく、1時間もしないうちに到着した。


(…あ、そうだ!)


ふっふっふ、いいこと思いついた!あたしは再びライブキャスターでハル兄ちゃんを呼び出した。


“もしもしヒナタ?もう着いたのかい?”

『うん!それでねハル兄ちゃん、皆に外でお出迎えしてほしいの!特に昴は絶対連れてきて!』

“え?あ、あぁ…分かったよ。”


とりあえずこれだけ伝えて通信を終了する。よーし…!


『疾風!ハル兄ちゃん達ポケモンセンターにいるみたいだからそこまで行ってくれる?』

〈うん!〉


タワーオブヘブンを越え、街の姿が一望できる。赤い屋根が特徴のポケモンセンターが見えてくるとあたしの口元が緩んだのが分かった。


『…あ!いた!』








「ヒナタは随分早くソウリュウからこちらまで来れたんだな。どんな道を通ったのか…」

『おーい!皆ー!!』

「…!ヒナタちゃんだわ!」

「…まさか、アイツは…!」


疾風がゆっくりスピードを落とし無事着陸。あはっ、驚いてる驚いてる…!


『ただい「お嬢ぉおおおお!!」おっふ!!』

〈ちょ、揺らさないでよ〉


何てこった…第一声を遮られた上に強烈なホールドで大変なダメージを負ってしまった。主に首。


〈ヒナタ様に気安く抱きつくな樹ぃいい!!〉

「ぐぉあ!?」

「あら、私が手を下す前に蒼刃に天誅されちゃった。さすがヒナタちゃんのスト…ボディガードね!」

「おい澪、今何か違うこと言いかけただろう」

〈いいんだよ斉、本当のことだから〉


突如ボールから飛び出し樹にはっけいを食らわせた蒼刃のお陰で何とかホールドから脱出。い、痛そうだったなぁ…ゴメンね樹。


そうそう、今誰よりも話したいのは…疾風を穴が空くほど見つめている昴。あたしは飛べるようになった疾風を飛行の師匠である昴にどうしても見せたかったのだ。


「…お前、疾風…だよな?」

〈う、うん!そうだよ〉


疾風だということを確認し、もう一度上から下まで隈無くその姿を見た昴は小さく笑った。


「そうか…飛べるようになったんだな、おまけにフライゴンに進化してたとは驚いたぜ」

〈す、昴のお陰だよ!昴がボクに、飛び方のヒントを教えてくれたから…!〉

「ははっ、良かったな疾風!」

『うんうん!本当によかったよありがとうね昴!』

「うわぁああああ!!」

『いだだだだ!?』


昴の目の前に顔を出したら凄い勢いで反転させられた。いやまぁ人体構造上180度回転はしてないけどね!したら死んでるしね!ていうか首!首を助けて悲鳴を上げてるからヘルプヘルプ!


〈ヒナタ様!ご、ご無事ですか!?〉

「コラァ昴!お嬢に乱暴すんなや!」

「きゅ、急に目の前に顔出してくるから悪いんだろうがバーカ!!(まだヒナタの顔を正面から見れるほど心の準備が出来てねぇんだよ…!)」

〈相変わらず痛々しいほどツンデレだね昴〉

「まぁアレは病気みたいなものだから…とりあえず治さない限りヒナタちゃんとの明るい未来はないわね」


な、何であたし今日はこんなに首への攻撃が多いんだろう…。あ、ありがとう疾風。わざわざ擬人化してさすってくれて…。


「ふふ、本当に元気そうで安心したよ。とりあえずヒナタ、ポケモンセンターに部屋を借りてあるから中においで」

『うん!あのねハル兄ちゃん、あたしまた紹介したい子達がいるの!』

「うんうん、中でゆっくりとね。ほら皆もおいで!」


あは、ハル兄ちゃん達も相変わらず賑やかでよかった。やっぱりこの空気が好きだなぁ…あたしの家族達は皆明るくて一緒にいるのが楽しい。


「…あ、ほらハルマ。まだ言ってないわよ?」

「おっとそうだったね」

「あぁ。昴、お前もちゃんと言うんだぞ?」

「わ、分かってるっつーの!」

「よっしゃ!ほんならお嬢に向けて…せーの、」


「「「「「おかえり!!」」」」」


『…!た、ただいま!!』


家、ではないけれど…そんなのおかえりって言ってくれる人がいたら関係ないよね。あぁ、あたしって幸せ者だ。

そしてあたしは両手を広げるハル兄ちゃんの腕の中に満面の笑みで飛び込んだのだった。


to be continue…



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