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「ここ最近再びプラズマ団が活動を始めたという報告がある。君は遭遇したことはないか?」
『…何度かあります。その度に追い払ってはきましたけど…確かに彼らは何か企んでいるような意味合いのことを話していました』
「やはりそうか…分かった、ありがとう。私達ジムリーダーも充分警戒しよう。勿論君もレシラム達を追うのであれば気をつけてくれ。奴らは2年前レシラム達を悪用しようとしたのだからな」
そっか、もしかしたらプラズマ団はまたレシラムやゼクロムを狙って現れるかもしれない。もしそうなれば絶対止めないと!
「それに…今回カゴメタウンで計測されたマイナス50度の異常気象。私は間違いなくキュレムの力だと考えている。プラズマ団がキュレムを含め伝説のドラゴンポケモン3体を掌握すれば世界は大変なことになる。それだけは阻止さねばならん!」
『そうですね…あたしも自分に出来る限りのことはします。プラズマ団のやっていることの全てを許すわけにはいきませんから!』
無理矢理ポケモンと人の絆を壊すなんてこと許しちゃいけないと思う。プラズマ団みたいな人達がいるから…嵐志のように大切な友達を奪われたり、氷雨のように人間を信じられなくなったポケモンがいるんだ。
「少ない情報で済まないな、役に立てただろうか」
『いいえ、充分貴重な情報です。きっと兄も喜びます!』
「そうか…ならば良いのだが」
『はい、本当にありがとうございました!』
「うむ、道中気をつけてな。私も今後分かったことがあれば何らかの形で知らせよう。…あぁそうだヒナタ、君のフライゴンだが…」
『え?』
疾風がどうかしたのだろうか?バトルを終えて回復させた疾風は今はボールの中で休んでいるけれど…。
「確か疾風、と言ったな。彼は君と強い絆で結ばれているようだ。そこでどうだろう、私から敬意を表して是非伝授したい技がある。旅が一段落したらもう1度ここへ来てはくれないか?」
…教えたい、技?え、それって超凄いんじゃないの?だってドラゴン使い様直伝だよ!?
〈この人が教えてくれるってことは多分ドラゴン技なんだろうね。僕達の中じゃ疾風しか使えない技だろうし…いいんじゃないの、疾風も喜ぶでしょ〉
雷士も賛成かぁ…うん、疾風もきっと嬉しいよね。本人の意思は尊重しなきゃダメだけど。
『分かりました!喜んでお邪魔させてもらいます!』
シャガさんに一礼すると、決して痛くはない力加減でグシャグシャと頭を撫でられた。…な、何これ何かハル兄ちゃんにされるのとは違う!無骨だけど暖かくて…これがお爺ちゃんの温もりってやつ…!?
ほっこりしつつ別れを告げ、あたしはソウリュウを後にした。んー…うん、やっぱりまずはヒオウギに帰ろう!
『あ、そうだ。この前も斉にちゃんと前もって教えろって言われたばかりだし…連絡入れとかないとね』
〈ヒナタちゃんて本当斉に弱いよね〉
『だって斉怒ると怖いんだもん…。ハル兄ちゃんをお母さんとするなら、斉は優しいけど厳しいお父さんみたいな感じかな』
家事が全く出来ないハル兄ちゃんに代わってずっと家のことをこなしてきた斉はもはや立派な主夫だ。ニドキングなだけあって体つきはがっしりしているし、顔も渋い男前だからとてもそんな風には見えないけれど…。
〈僕昔斉がスーパーのチラシに赤丸チェックしてたの見てドン引きした記憶があるよ〉
『あぁ…ほら、斉の趣味って節約と懸賞とアイデア料理だから』
〈果てしなく主婦の趣味ばっかりだね〉
…否定はできない。と、とにかくハル兄ちゃんに連絡しよう!
『…あ、もしもし?ハル兄ちゃん?』
“ヒナタ!僕だよ、元気にしているかい?”
『うん!あのねハル兄ちゃん、あたしさっきシャガさんと会ってたんだよ!』
“本当かい!?そうか…良い話は聞けた?”
『勿論!それでね、今からヒオウギに帰る所なんだけど…』
“あぁそのことだけど、ヒオウギじゃなくてフキヨセシティに来てくれないかな?”
『え?フキヨセ?』
“うん、実は今皆を連れて電気石の洞窟の調査に来ていてね。ヒオウギよりも近いしどうかな?”
『あ…わ、分かった。すぐ行くね!』
ハル兄ちゃんてば皆を連れて遠出するなんて珍しいな…研究に少し余裕が出てきたのかな?
何はともあれあたしは行き先をヒオウギからフキヨセへと変更し、腰のボールから疾風に出てきてもらった。
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