long | ナノ







3

「ではこちらから仕掛けさせてもらう!オノノクス、りゅうのはどう!」

『!よ、避けて疾風!』


オノノクスが恐ろしいほど高密度のりゅうのはどうを繰り出す。間一髪避けることが出来たけど…あれは当たったら絶対ヤバい!


「む…良い反応だ」

『(飛べる分少しはこっちが有利な筈…!)疾風、いわなだれ!』

〈うん!〉


オノノクスの頭上周辺から巨大な岩が降り注ぐ。けどシャガさんは焦らない、あくまで冷静に指示を出す。


「ドラゴンクローで砕け!」


オノノクスの爪が光り、落下してくる岩を次々と木っ端微塵に破壊していく。ていうか超素早いし型破り過ぎでしょ!?


「お返しだオノノクス!こちらもいわなだれ!」

『な…!』


オノノクスが咆哮すると、今度は疾風の頭上に落下する巨大な岩達。飛んでいる疾風はその突然の衝撃に耐えきれずバランスを崩してしまった。


〈うわぁあっ!!〉

『疾風!』


岩が翼に当たり落下しようとする疾風の体。このままじゃ大ダメージを受けちゃう…!


『こ、こうなったら…っ疾風!すなあらしで岩を吹き飛ばして!』

「!」


あたしの声を聞いた疾風が身をよじり、砂を巻き上げ暴風のような砂嵐を起こす。すると疾風に降り注いでいた岩がその螺旋の中で互いにぶつかり合い、みるみるうちに欠けていく。そして最終的には粉々に砕けてしまい、技としての威力を無くした。


『や、やった!上手くいっ、げほっげほっ!うわ目に入った痛っ!』

〈君まで被害被ってどうするの〉


うぅ、すなあらしってこっちまで砂が来るから本当は使いたくなかったんだけど…この際上手くいったし良しとしよう。

幸いオノノクスも砂に視界をやられて戸惑ってる。攻撃のチャンスは今だ!


『疾風!じしん!』


疾風が長い尻尾で地面を鳴らすと、地なりと共にオノノクスの足元へ大地のエネルギーが流れ込んでいく。そしてそのパワーをモロにくらったオノノクスは呻き声を上げて倒れ込んだ。


『疾風、ドラゴンクロー!』

「気を抜くのはまだ早い!オノノクス、りゅうのはどう!」


嘘、まだそんな力が…!?

突撃していく疾風にりゅうのはどうは避けることが出来ず直撃してしまった。何とか立ってくれているけれど…苦しそうな表情を見れば窮地に立たされているのは嫌でも分かる。


「…お互い限界のようだな、次が最後の攻撃になるだろう。オノノクス!はかいこうせん!」

『―――っ疾風!こっちもはかいこうせん!』


疾風とオノノクス、両者の大きく開いた口から同時に発射された光線。それはぶつかり合い、砂嵐をかき消すほどの爆風を巻き起こした。


(疾風…!)


徐々に煙が晴れていき未だ睨み合う両者の姿が現れる。…けれど、一方がぐらりと傾き倒れ込んだ。


「…ふ、私の負けだ」

『…!か、勝った…勝ったよ疾風ー!』

〈やったね、マスター!〉


倒れたのはオノノクス。目を回している所を見ると戦闘不能になってしまったのは間違いないだろう。つまり、僅差で疾風の勝利!


『あぁもう偉い!凄いよ疾風!』

〈え、えへへ…ボク、頑張れたかな〉

『頑張った頑張った!君は強い!』


嬉しそうに尻尾を揺らめかす疾風に抱き付くと、ニッコリ笑って頬ずりしてくれた。うわぁああドラゴン使いのシャガさんに勝つとか感激過ぎる!


「ここ最近手応えの無い挑戦者ばかりでな…正直退屈していたのだ。故に君のようなトレーナーと全力で戦えたことが嬉しい…良いバトルだった、感謝する!」

『こちらこそ、挑戦者でもないのにバトルして頂いてありがとうございました!』


差し出されたシャガさんの大きくゴツゴツした手を握り固く握手を交わす。な、何かあたしもキョウヘイくん達みたいにジム戦に挑戦したくなってきちゃったかも…!


「さて…私の都合で君の時間を取ってしまい申し訳なかった。確か君は私に聞きたいことがあってソウリュウまで来たと言ったな?」

『あ…はい、そうです!何点かあるんですけど…まずあたしの自己紹介からさせてもらいますね』


ていうか完全に申し遅れたよねあたし。名前も言っていないとか!


『あたしの名前はヒナタ、カントー地方からイッシュへ引っ越してきました。そして考古学者である兄の手伝いをする為にイッシュ地方の神話や遺跡を調べているんです』

「ほう…若いのに感心だな。イッシュの神話の為に私を訪ねてきたということは…知りたいのは伝説のドラゴンポケモン達のことか?」

『はい、そうなんです!』


さすがシャガさん、話が早い!この様子だと知っていることはあるみたいだし…期待出来そうだよね。


「うむ、分かった。私に答えられることであれば何でも聞きなさい」

『本当ですか!?ありがとうございます!』

「君には良いバトルをしてもらった恩もあるしな。だがここでは何だから場所を移そう、私の家に来るといい」


疾風にもう一度お礼を言いボールに戻し、シャガさんに続いてジムを出る。家ってさっき見たあそこだよね…大きいお家だったなぁ。


やっとシャガさんの元へ辿り着いた。レシラムやゼクロム、そして…謎に包まれたキュレムのこと。聞けることは全て聞こう。


一体どんな情報を手に入れられるのだろうか。あたしの胸はシャガさんのお家に近付くにつれ期待を膨らませていった。


to be continue…



prev | next

top

×