2
『ふう…お腹も膨れたし、次は町の探索にでも行きますか!買い物もしておきたいしね!』
「僕眠くなったから部屋で寝てていい?」
『早っ!!食べてすぐ眠くなるとか赤ちゃんなのやっぱり!?』
「失礼だね…誰でもそうなるでしょ。早いか遅いかの違いだよ」
あたしの手から部屋の鍵を奪い、欠伸を1つ残して雷士は去っていった。いやいや、君は異常だと思うけれどね。
「…俺も眠ぃ。先に戻るぜ」
『協調性ゼロか!!』
何てことだ…紅矢も部屋に戻り2人脱落。我が家のドSコンビは空気を読まないようです。
「ヒナタ様!俺がお傍にいます!」
「ぼ、ボクもマスターと一緒に行くよ」
「オレも暇だし…姫さんといた方がおもしれーからついてくぜ!」
『うわぁああんありがとう大好き!!』
あぁ、この3人は何て良い子達なんだろう!
まとめて抱き締めたら蒼刃がアワアワ暴れ出して、疾風は真っ赤になって動かなくなり、嵐志には「オレも愛してるぜ姫さん!」と逆に抱き締められた。そして嵐志は蒼刃にぶっ飛ばされた。…蒼刃そんなに嵐志のこと嫌いなのかな。
−−−−−−−−−
『んー…やっぱりって言ったら失礼だけど…』
「何もねーなここ!」
『ハッキリ言っちゃったよこの人』
そう、何と言うか…これと言って目をひくものがない。小さな町だから仕方ないと言えばそれまでだけれど。
「…おや、お前さん達見ない顔だねぇ…。旅のお方かい?」
『え?あ、はい!』
キョロキョロと町並みを見渡していると、右側の民家からちょうどお婆さんが出てきた。目が合って慌てて会釈すると、お婆さんはまじまじとあたしを見つめてから次いで柔らかく笑った。
「そうかいそうかい、ここは何もない所だろう?何せ皆ある言い伝えのお陰で臆病になっちまったからねぇ…かく言うワシもそうなんだが…」
『…言い伝え?』
「あぁ、昔からカゴメタウンに伝わるお話だよ。よかったら聞いていくかい?」
『は、はい。是非!』
そう言うと立ち話もなんだからと、お婆さんの家にお邪魔することになった。言い伝えかぁ…昔話みたいなものだよね。どんな内容なんだろう?
お婆さんに連れられ家に入ると、蒼刃達も一緒に椅子に座らせてもらった。お茶まで出されて慌ててお断りしたけれど、いいからいいからと優しく笑うものだから何も言えなかったよ。
「…さて、早速始めようかね」
お婆さんは一口お茶を飲み、ゆっくり息を吐いてから話し始めた。
「このカゴメタウンの裏にはジャイアントホールと呼ばれるそりゃもう大きな穴があってな、その穴を作ったのは大昔に降ってきた隕石と言われておる。そして隕石の中にはおっそろしいポケモンが潜んでおったそうな…」
『お…恐ろしい、ポケモン?』
「そやつは辺りが闇に包まれた時、凍てつくような風と共に現れ人やポケモンを喰らうと信じられていたんじゃ。じゃから昔のもんは町を塀で囲ったり、夜になったら外出をやめるなどして身を守ろうとしたんじゃな」
『ぽ、ポケモンが人を!?』
「あくまで言い伝えじゃが…現代にも風習が残るということはそれなりの信憑性があるのかもしれんの。話はこれで終わりじゃ。面白かったかの?」
『は、はい!興味深いお話ありがとうございました』
お茶を飲み干して席を立ち、あたし達はお婆さんの家を後にした。
改めて周囲を見渡すと一番に目に入ってくるのはやっぱり町を囲む塀。お婆さんの話を聞いた後だから何だかとても重いものに見える。
「ヒナタ様、この町の名…カゴメには、囲めという意味があるのではないでしょうか」
『な、なるほど…!頭いいね蒼刃!』
「い、いいえ、それほどでも…!」
「見ろよてっちゃん、そーくん超照れてる」
「そ、蒼刃は、マスター大好きだから…」
prev | next
top
|