long | ナノ







3

「まず…聖剣士とは私の他に2体いる。ビリジオン、テラキオンという名だ」

『ビリジオンに…テラキオン』

「ビリジオンが草タイプ、テラキオンが岩タイプだったか?」

「うむ、そして私は鋼タイプだ」


ちなみに嵐志の補足によると聖剣士は皆格闘タイプも持っているみたい。それにしてもコバルオンは鋼タイプなんだ…それに格闘タイプでもあるって、蒼刃と一緒だね。


「…そしてもう1体、見習い剣士がいるのだが…」

『え、見習い?』

「うむ…ただ、奴は今行方知れずなのだ。我らの元を離れ己を磨く旅に出ると飛び出したまま連絡が無くてな…。我らはまだ早いと止めたが聞く耳持たず…全く何をしているのやら」

〈ふぅん…猪突猛進タイプだね〉

「いーんじゃね?オレはそーゆうの嫌いじゃねーけどな」


どこか遠い目をして溜め息をつくコバルオン。その見習いくんのことよっぽど心配なんだなぁ…。今どこにいるのだろう、無事だといいのだけど。


『…ねぇねぇ、ビリジオンとテラキオンはどんなポケモンなの?』

「そうだな…ビリジオンはとにかく賢い奴だ。かつて人間同士の争いに巻き込まれたポケモン達を、ビリジオンは持ち前のスピードと知恵で素早く避難させたのだ」

『へぇ、凄い!カッコいいねー』

「…まぁ、その…性格は…お世辞にも褒められたものではないのだが…」

〈何か澪みたいだね、実力はあっても性悪とか〉

「こないだのシロナさんもそーかもな!」


あ、ビリジオンって女性だったりするのかな。性格を話した途端に顔色を悪くしたコバルオンを見る限りだと…もしかしたら尻に敷かれているのかもしれない。

性格うんぬんは置いておいて、雷士の言う通り澪姐さんみたいだなぁ。樹や昴は全然彼女に刃向かえなかったもん。シロナさんも自信に溢れていて勝ち気だったし…あは、女性は強いね。


「そしてテラキオンは…そうだな、一言で言うならば義に厚い奴だ。先程話した戦争では常に前線に立ち、類い希なるパワーで誰よりも多くポケモンを救った」

『おぉ…!男前だね!』

〈うわ、僕ダメだそういうの〉

「ぶはっ、らいとん暑苦しーの嫌いっぽいもんな!」


確かに…前ライモンシティでヒュウくんのフタチマルと会ったとき、その熱さに引いていたもんね。でも雷士は少しくらいテラキオンの熱さを見習うべきだと思うよ。


『ていうかあたしにもう少し優しくしてほしい』

〈充分優しくしてると思うけど〉

『えー嘘だよ!優しかったら電撃とかしてこないって普通!』

〈好きな子ほどイジメたくなるって言うでしょ。それに手加減してるし〉

『いやいや手加減するくらいなら初めからしないでほしいな!』

(前半の言葉はスルーなんだね…ヒナタちゃんのバカ)

『あ、ちょっと無視しないでよ!』





「…何だろう、今オレすげーイラッとした。姫さん鈍くて助かったけど」

「奇遇だな、私もこの青春の香りに苛立ちを覚えていた所だ」

「あれ、コバルオンってそーゆうキャラだったのか?」




−−−−−−−−−




「…ふう、随分と話し込んでしまったな。人間と話すのが初めてでつい楽しくなってしまったようだ」

『あは、あたしも楽しかったよ!まさか伝説のポケモンと話せるなんて思ってなかったし…光栄です!』


そう言って笑うと、コバルオンも釣られたように微笑んであたしの頭を撫でてくれた。

彼はきっと聖剣士のリーダーなんじゃないかとあたしは思う。落ち着いているし…この優しい手の大きさにはつい安心してしまう包容力があるから。
 

「では私はそろそろこの場を去るとしよう。いつ他の人間に見つかるか分からんからな」

『うん、そうだね。あたし達もカゴメタウンへ行くよ』


そう、何度も言うけれど彼は伝説のポケモン。その珍しさに邪な気持ちを抱く人だってきっといるだろう。

お互い立ち上がって軽く草や土を払い、あたしは手を振ってその場を去ろうとした。けどコバルオンがあたしの腕を掴んで足を止めさせた。


『?』

「…まだお前の名を聞いていない」

『あ、そっか。あたしはヒナタだよ、遅れてゴメンね』

「そうか…ヒナタ、か。良い名だ」


あたしの名前を確かめるようにもう一度呟いたコバルオン。ていうか名前褒められた…!何か嬉しいな。


「…ヒナタ、私が住処を離れて各地を回っているのには理由がある。近頃妙な胸騒ぎがしていてな…おまけに怪しげな人間達の姿も目にする。お前も気をつけるのだぞ」

『…!』


それって、プラズマ団のこと?

もしかしたらコバルオンは…昔の戦争のようなことがもう一度起きるんじゃないかと心配しているのかもしれない。


『…大丈夫だよ、ありがとねコバルオン!』


もしもプラズマ団の目論見が分かったら…あたしは絶対止めてみせるよ。コバルオン達聖剣士の皆が守った世界や、Nさんが夢見た理想の世界を壊されたくはないから。


「…うむ、ではな。どこかでまた会おう」

『うん!』


最後にあの優しい顔で笑うと、コバルオンは原型に戻り駆けていった。凄いな、一瞬だったよ。


『…貴重な経験しちゃったね。それじゃあたし達も行こうか!』


ビリジオンとテラキオンにも会えるといいなぁ…それと、見習い剣士くんにも。あ、そういえば見習いくんの名前聞くの忘れちゃった。…まぁ次コバルオンに会ったら聞こうかな。


こうしてまさかの伝説さんとの出会いに未だ躍動する胸を撫で、あたしはカゴメタウンへと続くゲートをくぐった。


to be continue…



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