蘭拓 | ナノ




「試験が近くなってきたから、勉強でもしないか」

珍しい事に神童からのお誘いだった。恋人である俺達は学校で共に過ごす時間じゃお互いにお互いが足りない。ましてや同性。試験のため唯一共に時間を過ごせる部活でさえ休止になり、神童不足に陥っていた俺にとっては最高の言葉だった。

しかしまだ夏を迎えていないのにこの暑さは何なんだ。じっとりとシャツは肌に貼り付いて気持ちが悪い。冷房のついた涼しい部屋で、神童と二人きり。本来ならもっとドキドキするような勉強会だったのに、地獄のような暑さのせいで台無しだ。

「節電だ」神童がそう言って冷房の温度を上げたおかげで、俺の体は最高に涼しさを求めている。気休めになるだろうと扇風機をつけてくれたが、こんな生ぬるい風じゃ足りるはずがない。ぐたりとフローリングに寝そべって見ても、冷気を感じるのはほんの一瞬で、床はあっという間に温くなってしまう。

いま何時だろう。外に目をやると雲一つない青空が広がって、体力を吸い取っていると言われても信じれるくらいギラギラと光る太陽が、窓縁から顔を覗かせていた。

神童はというと真面目に、かつ熱心に問題を解いている。俺達、本当に付き合っているんだろうか、なんて思ったりしたけど時々ちらりと俺の様子を盗み見している事に気付いて、ちょっと嬉しくなった。可愛い奴め。少しばかりからかってやろうか、目の前にある筋肉のついた無防備な素足を指でなぞる。くすぐったそうに身をよじり「なんだよ」って、満更でもないのか嬉しそうに笑う神童の反応が愛しくて仕方ない。

「神童」
「ん」
「好き」

心からそう思った言葉を口から放った瞬間、弾けるようにバサバサと大量の紙が落ちる音がして、何事かと上半身を起こすと、テーブルにあんなに沢山広げられていた問題集の山が床にぶちまけられていた。犯人であろう神童本人も、床にぐったり寝転んでいた。

「暑い」

顔を両手で覆い隠して、消え入りそうな力のない声をあげる神童の耳まで真っ赤にさせている姿が横目に見えて、にやり。俺の頬は緩むのだ。


song by Perfume
「レーザービーム」


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