頭がズキズキと痛む。 喉は腫れて、声を出せない。 無理に話そうとすると咳が止まらなくなり、頭痛は増すばかり。 風邪だ、そう確信して体温計に頼ると「38度5分」しっかり風邪引いていると知らせてくれた。 今日は学校を休もう。 誰かにうつしたりしたら迷惑だし、まともに授業を受けれそうにない。 それに、もし大切な神さまにうつってしまったら、グランドを駆け回る姿や、静かに授業を受ける姿などを見ることが出来なくなってしまう。 私が休むのだから見ることが出来ないのは変わりないけれど、神さまが寝込む姿は見たくない。
起こした身体をベッドにもう一度倒す。 硬すぎず、柔らかすぎるわけでもない、愛用の枕が熱くなった頭を優しく受け止めてくれた。 ズキン、ズキン、ガン、ガン、と内側からトンカチで殴られるような錯覚に落ちる。
しんどい、強く瞼を閉じて息をゆっくり吐いた。 そうすれば、少し症状が和らぐのではないかと思ったが、私の考えは甘く、無意味と化した。 気持ち的に落ち着いただけで、痛みが止むことはなかった。 眠ってしまえば、楽になれる。 そんな思いを胸に、意識をそっと手放した。
どれくらい時間が経ったのだろう、眠りについていた意識が目覚めた時、あんなに青かった窓の外は淡いオレンジと青が混ざった色になっていた。
寝過ぎちゃった。
ふと身体を起こそうとすると、頭に激痛が走り、何かがのし掛かるような重く苦しい感覚に襲われた。
頭が、クラクラする。 あんなに休んだのに、症状は悪化したようにも思える。 部屋に誰もいない。 親は仕事に出ていて家の中は私一人。 急にどうしようもない寂しさがやって来て、身体が小さく震える。 誰か、いない、かな。 会いたい。 誰でもいい。 会いたい、会いたい、会いたい。
「山菜」
声がして、目が覚めた。 愛しい愛しい彼の声。
「神さま……!?」
学校帰りなんだろうか、制服姿の彼は、にっこり笑って優しく私の頭を撫でた。 楽にして、と耳元で囁かれ溶けてしまうかと思った。 顔が熱いのは、風邪のせいなのかな。 汗をかいてグショグショになったよれよれパジャマに、朝から整えてもいない髪。 こんな恥ずかしい姿、見られたくない。 それでも、来てくれた事がそんなこと気にならない程嬉しくてたまらない。
暫くしてお粥を作ってくれた。 もちろん、食べさせてもくれた。 幸せ、幸せ、幸せ。 風邪を引いたのはよくない事だけど、まさか神さまがこうやって看病に来てくれただなんて。 冷えきった心がぽかぽか熱を帯びていく。 幸せ、だわ。
それでも頭はクラクラする。 こんなに休んだのに、症状は悪化したようにも思える。 部屋に誰もいない。 親は仕事に出ていて家の中は私一人。
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