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サッカー部の一年生マネージャーとチームのキャプテンが付き合ってるんだって、と誰か誰だか分かるような噂と言う名の悪い知らせが俺の耳に届いたのは、二人が付き合い始めて一週間も後の事だった。
そして同時に、俺は二週間前、誰にも話した事のない重大な悩みを一年生マネージャーに打ち明けた事を鞭を打たれたように思い出した。
空野葵。それが奴の名前。明るくて流行にはすぐ乗っかる、マネージャー達の中で一番女の子らしい女の子である。恋愛観が豊富で、俺の抱いた妙な感情も、しっかり受け止めてくれた。

「男なのに、神童が、気になって仕方ないんだ」

何度か唇を噛んで、泣き出しそうな表情になるのを見た。空野の真意が分からないまま、全部、吐き出すように打ち明けた。
気持ち悪い、そう軽蔑されるかとヒヤヒヤしていた。それでも空野は目を逸らさず、最後までしっかりと俺の話を聞いてくれた。おまけに頑張って、と励ましてもくれたのだ。

それなのに、俺は、あいつは、


「裏切っただなんて、人聞きの悪いこと言わないでくださいよ」

放課後、部活が始まるまでに空野を連れ出し問い詰めてやると、奴は爪を弄りながらジトリと俺を睨み付ける。不愉快だ、と言いたそうだがそれは俺の台詞でもある。

「お前は、神童のこと好きだったのか?」
「……嫌いだったら付き合いませんよ」

我ながら、女々しい行動だと思う。キャプテンとマネージャーが付き合うなんて、よくある話だ。それでも沸き上がるこの気持ちは、きっとそれほど神童の事が、好きで、きっとそれほど空野の気持ちが分からなかったから。
気持ちの悪い、ぬるま湯に浸かったような沈黙が流れる。静かに、空野が酸素を吸う。

「私、霧野先輩が好きなんです」

……………え?
いま、何を言った?
空野は、爪なんか弄らず、まっすぐ俺を見ている。二週間前、あいつが俺の悩み聞いてくれた時のように。

「そんな先輩が好きな人が、まさかキャプテンだなんて。キャプテンと付き合えば、先輩の趣味とか好みが分かるかなぁって、そう思って。でも、どうしてでしょうね。全く、分からないんです」

ペラペラと溢れ出す言葉一つ一つを聞き逃す事が出来なかった。
暫くして理解出来た事は俺は、こいつが、

「私、謝りません。謝りなんか、しませんよ」

まるで彼奴を落とした時のように、口角を上げて柔らかに微笑みを浮かべる空野に、愚かにも俺の心臓は脈を速めて行く。

おかしい。こんな事、あってたまるか。だって俺はこいつの事が、





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