刀剣乱舞 | ナノ
02

加州清光を選んでから間もなく、こんのすけが刀を持ってきた。そしてそれを私に持たせて、力を込めるようにと言った。力を込めろと言われたので素直にグッと強く握ると、音もなく、まるでずっとそこにいたかのように、私の目の前に静かに一人の青年が現れた。先程モニターで見た、加州清光だ。


「あー。川の下の子です。加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね。よろしく、主。」

「ももです。よろしくね、加州清光くん。」

「清光でいいよ、俺を選んでくれてありがとう。」

「こちらこそ、来てくれてありがとう。あ、これ、刀。」


ずっと両手で握りっぱなしだった刀を清光に手渡すと、一段落と言ったようにこんのすけが出陣を命令してきたのでその通りにする。右も左も分からない私と清光は、こんのすけに言われるがまま動いていた。出陣用のゲートはこれだ、この機械で出陣先の時空を決めろ、審神者はモニターで出陣中の戦績の確認が可能だ、とにかくやってみれば分かるからやってみろ。そんなことを丁寧に、しかし矢継ぎ早に告げられたので、頭がパンクしていたが、清光が「任せて」と言ってくれたのでその通り、清光を函館に送った。

その後はあまり思い出したくない。

モニターを見ながらこんのすけが「真剣必殺が発動しました!」と喜ぶ隣で、まさか人が死ぬところを見届けなければいけないのかと感じたあの恐怖を、今でも覚えている。身体中の深い傷から血を流し、脂汗がにじんだ額を見て、足がすくんだ。手入れすれば直るということを知らなかったんだから仕方がないけれど。
清光は帰還したあとすぐに手入れされた。こんのすけに言われるまま、手伝い札を使って全快になったときは、安堵から涙してしまったものだ。その時の清光は随分と焦っていた。申し訳ない。その後、鍛刀の仕方を教わり、愛染国俊を顕現。それまでの湿っぽい空気を吹き飛ばすような騒がしさで、顕現したあと思わず泣きながら笑ってしまった。
三人で刀装の作り方も学び、本丸内の案内が終わるとこんのすけは説明は以上だと帰ることとなった。


「それではもも様、何かありましたら端末からお知らせください。」

「はい。ありがとう、こんのすけ。」

「失礼します。」


ゲートでこんのすけを見送ると、どっと力が抜けた。無意識に緊張していたらしい。それでもまだ、初対面の二人がいるので緊張がとけるまでとは言わないが。




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