二 「せっかくの休日だったのに…」 窓から外の状況を見て、銀時は深い溜め息をついた。 「ね。今日は晴れだったら皆と外で遊ぶはずだったのに」 銀時の隣に居る灑夜も残念そうに肩を落とした。 今日は休日のため、寺子屋はもちろんやっていない。 せっかく勉強に励むために寮に住んで居るのだから、勉強をする事が最善だが、こんな天気では憂鬱で勉強も手につかないだろう。 それが理由なのか、莎詩乃、高杉、銀時、桂、灑夜のいつもの五人は部屋でグダグダと過ごしていた。 「最近天気も怪しかったからな。梅雨入りしたんだろ」 流石は桂。と言った所か、桂はこんなに雨が降って憂鬱状態になっていても、頑張って勉強をしている。 「んだよ、インディンペンデンスディかよ…」 「インディンペンデンスディって何だよ」 銀時の呟きに高杉は小さくツッコんだ。 その高杉の横では、莎詩乃がせっせと何やら作業をやっていた。 「…莎詩乃、何やってんの」 「てるてる坊主作ってんの!」 質問した高杉に顔を向ける余裕もなく、莎詩乃はもくもくとてるてる坊主を作っている。彼女の作るてるてる坊主の顔は、色んな表情をしていた。 『後少しで20個目に入るんだ!かなりやばくない?晋助!』←力説 「いや、知らねぇよ。つか20個は多すぎだろ」 「てるてる坊主と言えばさぁ…」 さっきまで窓辺に居た銀時が、いつの間にか莎詩乃と高杉の目の前に、ぬっと顔を出していた。 銀時に並にそれなのに黒く笑っているのだろうが、あまりにも死んだ魚の目の存在感が強すぎて、ただニヤけているような顔に見えてしまっている。 『…てるてる坊主がどうしたってーのよ』 「実はなめっちゃ怖えー話があんだよ」 「え…止めてよ銀君。俺ホラー無理…」 窓辺で袋に入ったお好み焼き・タコ焼き用の鰹節をもっしゃもっしゃと食べる灑夜の手が止まった。 「何だよ灑夜、ホラー駄目なの?なら尚更話してやるよ!!」 「ちょ…銀君…ええええぇえ!!?」 「そう言う銀時だって、実はホラー系駄目だよな」 「!!う…うっせぇよ!!!」 不意打ちの高杉の口出しに、かなり図星した銀時。 「と、とりあえず俺の話聞けって。実は、あの有名なてるてる坊主の歌h『灑夜ぁ!てるてる坊主吊すの手伝ってええぇ』 「合点承知!!!」 「俺の話聞いてえぇえ!!!(泣)」 銀時の話をスルーして莎詩乃は灑夜と窓にてるてる坊主を吊るし始めた。 スルーされた銀時を見て鼻で笑う高杉に、横で勉強を続ける桂。 丁度皆バラバラな行動をし始めた時だった。 ガラッ 部屋の扉が開いた。 「皆さん、おはようございます」 『!!松陽先生!』 「松陽おじちゃん!!」 我等が吉田松陽の登場だ。 雨で憂鬱になっていた彼等の表情は、松陽の登場によって一気に表情が晴れた。 「松陽先生聞いてくれよ!今日雨なんだけど!せっかく皆で遊ぼうと思ったのにさあああ」 銀時の言葉に松陽は思わず笑みが零れた。 「やっぱり遊ぶ予定でしたか。ではこれから私と一緒に、皆で散歩に行きませんか?」 「散歩…?」 桂は首を傾げた。 「雨の日に…散歩、ですか?」 「はい。雨の日に散歩をすると、いつもと同じ道でも別なような道に見えて、新しい発見が沢山あります。」 「ママママジでか!!!俺行きてぇ!」 銀時の目は一際輝いていた。 「おじちゃん、俺も行きたい!」 「俺も。たまには雨の日の散歩も良いよな」 『あたしも!』 「…まぁ、仕方ねぇから行ってやる」 『晋助、素直に行きたいって言えば良いのにー』 「うるせぇ」 高杉は頬杖をしたまま、莎詩乃からそっぽを向いた。 松陽は、ははは。と小さく笑った。 「分かりました。では、傘を持って玄関に集合して下さいね」 はーい! 五人はそう返事をすると、直ぐ様傘を取りに行った。 |