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辺りはもう夜を終えようとしていた。
ビルとビルの隙間から日が昇っているのが見える。
今は何時頃だろう。
しかも屯所に朝帰りという事態だよwww

アタシ達はその朝日が昇っていくのを見つめていた。

「……ああ、朝日が昇るよ。
ベン」

長い沈黙を破ったのは、おっさんだった。

「…まだ一件も子供の夢を叶えていないのに、朝日の奴が昇ろうとしているよ。
ベン」

「今年は…最悪だったな」

二人の会話を遠くで聞き、携帯を開いた。
現在、12月26日、午前6時過ぎ。

『…おっさん、どうするの?
このまま諦めるんですか?』

アタシはおっさんに問い掛けた。

「いや、このまま帰るわけにはいかない…」

即答だった。
おっさんは諦めていなかった。

「貧しい家の100円ショップで手に入る夢しか持ってない子を選んで、その子の夢だけ叶えて帰ろう」

『やっぱりそこら辺にはこだわるんだね…』

「もう良いんだ…良いんだよ、お嬢さん。
だからその子の笑顔だけ抱いて帰るんだ、今年は」

『坂田さーん、そんな子居るかなぁ?』

坂田さんの方に目をやると、坂田さんはアタシが聞くことを把握してたみたいで、既に名簿を見ていた。

「だかさァ、瑚町よ。
この飽食の時代にそんなガキが存在するわけ…お!」

『なになになに!?何かよさそうな子いたの!?』

「ちょ、名簿見せろ!」

横からおっさんが坂田さんの手にしている名簿を取って、そのページを見る。


大天 瑚町
ほしい物:嫁


アタシのページだった。

「「…」」

『Σんな…っ』

「ププッ…お前、嫁って…ぶははは!!
アレだろ、嫁って沖t『シャアラアアアップ!!!』

おっさんと着ぐるみがポカーンとしている中、坂田さん一人だけが爆笑していた。

『ちょっと坂田さん…ヤバいよ、視界がぼやけてきたから…止めてくれ…』

どこの中学生のからかいだよ!こんな奴もクラスに一人は居たぞ!
そしてここまで来ると二人の目線も痛いんだが…。

『すいません…お二方…』

申し訳なさすぎて、アタシは苦笑混じりで頭を下げた。
二人はというと

「嫁は確かに金かからないけど、…どうするベン?」

「どうするも何も、お嬢さんには世話になったし…」

『Σ親切だなおい!!』

優しかった\(^q^)/
申し訳なさすぎる…orz

すると相変わらず爆笑している坂田さんが話した。

「この名簿、瑚町のほしい物も乗るんだな。
銀さん面白すぎて仕方ないわ」

『…アタシのほしい物も乗る…?
…あ!』

アタシはピーンと来たね!
おっさんから名簿を取り、ページをひたすらめくる。

アタシのページがあるなら、"あの子"のページもあるはずだ。
そして数分後、暫くめくった末、ようやく見つけた。

『あった…』

「何がだ?」

『この子はどう!?』

そう言いながら、ページを三人に向けて見せる。

「「「あ〜」」」

ページの顔写真に写るはチャイナ風娘の顔。


神楽
ほしい物:肉まん









―万事屋銀ちゃん


坂田さんはゆっくりと玄関の扉を開いた。

「すいませんね、なんか」
人差し指を口の前で立て、坂田さんはおっさんに言う。

「いやいや、いいんだって」

そう答えるおっさんは手で口を抑え、笑いを堪えていた。

「それより安あがりなお子様をおもちでお幸せですな。
プックックックッ」

というか笑っていた。
因みに今、アタシ達は抜き足差し足で、廊下を歩いている。

「にしても流石だな瑚町。
その発想はなかったわー」

『アタシのページがあるなら、神楽のページもあると思ったんだ!』

今年一の閃きだったんじゃね?って坂田さんにからかい口調で言われたけど、気にしないもんね!

廊下を少し歩いて、神楽が居る部屋に入ろうとした時だった。

視界の横に白いものが見えた。
大きくて白く、地球上で生まれたものではない動物。
そして万事屋銀ちゃんのマスコットキャラ。
定春だ。

『さっ…定春ー!!』

アタシは瞬間的に定春の傍に行った。
定春は寝起きなのか、大きな体を丸め、眠そうにしている。
定春に会うなんて久々過ぎるんだぜ。癒しだなぁ。可愛い可愛い!

「瑚町、先に部屋行ってるぞー」

『うん!』

遠くから聞こえる坂田さんの声に返事をすると、すぐさままた定春に戯れた。

「可愛いなぁ定春…。
ねぇ、アタシと契約して、真選組屯所のマスコットキャラになってよ!」

と某アニメの名言を真似して、定春に手を差し出したところ、その手をガブッと噛まれたのは言うまでもない。













ガラッ

『坂田さーん…って、アレ?いない…』

坂田さん達が入った部屋にひょっこりと顔を出したものの、不思議なことに三人の姿はどこにもなかった。
部屋をキョロキョロ見回していると、「瑚町!」と名前を呼ぶ声がした。

『神楽!』

どうやら声の主は神楽だったらしい。
神楽の顔は頬や瞼に落書きがされていた。
さては、神楽が寝ている隙に坂田さん達が書いたのかな…。

『おはよう神楽!
それでもってメリークリスマス!』

「メリークリスマスネ!
瑚町もここで一緒に肉まん食べるヨロシ!」

『良いの!?ありがとー!』

早速、神楽の横に座ってこたつに入る。
あったかい!

「はい、瑚町。肉まんアル!」

神楽はアタシの前にポンッと肉まんを置いた。

『いただきます!』

パクッと肉まんを頬張った。
ほんわかクリスマスだ!


















アタシ達の座るこたつの反対側。
こたつから一つの手が伸びていた。
手は"Merry Christmas"と、それはそれは真っ赤な血で畳に記していた。














ブラッディ・クリスマス!
新(おはようございまーす…って、瑚町さんじゃないですか)
(おはよう!しんぱっつぁん!
ぱっつぁんも肉まん食べる?)
神(瑚町、新八に肉まんあげたら肉まんが眼鏡になるから、あげちゃ駄目アルよ)
新(いや、肉まんは眼鏡にならないから!
それはそうと、銀さんの姿が見えないんだけど…)
(本当だよね、どこに行ったんだろ?)










―後記―
間に合った…!
クリスマスまでに間に合った…!!
そして初めてフルで原作沿い出来ました!
それだけが嬉しくて…←
なので年表が違うとか気にしまs((
因みにブラッディ・クリスマスは"血まみれのクリスマス"って意味です。…中二病だ…←
ってな訳で皆さん、ハッピーメリークリスマス!