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「瑚町…アンタ、何考えて『ああああああ!言っちゃったあああ!!(ノД`)』

アタシは体中の力が抜け、そのまま座り込んで泣き始めた。
何度も大粒の涙が頬を伝う。
拭いても拭いても涙は頬を伝い続ける。
いろんな感情が涙となって流れる。

『あー…もう…馬鹿、バカ…アタシ、本当に馬鹿だぁ…』

「何泣いてんでさァ」

総悟は座り込むアタシを前に同じように座り込んだ。
真っ正面から泣き顔見られてる…(泣)

『…本当はさ、8日の0時になった瞬間、一番始めに総悟に「お誕生日おめでとう」って言う予定で…でも、神山がその作戦やろうとしてるから、だったら今日一日中総悟と居れば最初に祝えるかなって思って…』

「は?神山?作戦?」

総悟は暫く考えて溜め息を一つつくと、自ら自分の隊服の袖でアタシの涙を拭き取り始めた。

「別に誕生日なんか、ケーキが食えりゃそれで良いし」

『でもね、』

総悟の言葉を遮り、アタシはそのまま続けた。

『総悟に七夕を好きになってほしかった…』

そこで不意にアタシの涙を拭く総悟の手が止まった。
てか何だろうこの状況…。
七夕→すき焼き→号泣
とは何ですか…



そんな事を考えていると


バチイィィイン


『いいってええええ!!!!』

「本当に馬鹿なんじゃねェですかィ瑚町は。あ、さっき自分で"馬鹿"って言ってたか」

総悟からとてつもなく痛すぎるデコピンをくらった。
改めて総悟の表情を伺うと、普通の表情ではいるが、むしろその表情がどこからか腹黒のオーラを引き立たせていた。

『酷い…人が泣いてるっていうのに、こんな時でも腹黒かよ…』

「それが俺だから」

『…そうですね』

いや、そんなに自信あり気に言う事じゃないだろ!

でもおかげで普通に会話しているうちに、涙引いてきたかも…。
涙が引いたことに総悟も気づいたのか、やっと腹黒いオーラが消え失せた。

「てか、一番始めに誕生日祝いてェとかどこぞ彼女がやる事だよな」

その瞬間、今の総悟の言葉がアタシに重くのしかかった。

「別に俺等幼馴染みじゃん。だからと言って神山に祝われるのもキメェけど」

ものっそ毒舌吐いてるよこの子…ちょ、だれか止めてあげて。

『いやぁ…幼馴染みの意地?』

何で疑問形になるんだアタシは!

「幼馴染みなだけで、そこまで意地張るんじゃねェやい」

『すみません…』




もしもし神様。
アンタはやっぱり酷い奴だよ。
何でアタシと総悟を幼馴染みにしたんですか。
幼馴染みなだけで、こんなに近付きたくても全然遠いよ。




けど、と総悟はまた話し始めた。
その表情はどうしてか、どこか嬉しそうに見える。

「馬鹿瑚町のせいで、少しは七夕を好きになる気にはなったかもしれねェ」

『……』





総悟のお父さんとお母さん。
明日は待ちに待った彼の誕生日です。

腹黒でドSでサボってばっかりの生活をしている総悟ですが、それでもアタシは
幼馴染みの彼が大好きです。

…だから、7月8日に産ましてしまった事を後悔しないで下さい。

総悟は今日も相変わらず元気です。





『…総悟』

総悟に一つでも好きが増えると、幼馴染みのアタシもその分笑顔になれるよ。

「ん?」

『明日は、"お誕生日おめでとう"』

「一日早ェでさァ」





だから




明日は、HAPPY BIRTHDAY













貴方へ幸福を。
藺(やったね瑚町!何とか成功したね!)
(…今思えばあの時のデコピンは、総悟なりの精一杯の励ましだったのかもしれない…)
藺(さすがツンデレ隊長だね…!)
(そんな君も好きさ!!)←力説
蘭(何だコイツ等…)








―後記―
今月中旬は、ほぼこの話を制作して時が過ぎたような気がします…←
かなり誕生日から離れての後篇でした。
何か、シチュエーションとか作戦とか全然出て来ませんでしたね…。orz
総悟の誕生秘話(…ん?これはどちらかと言えば"悲話"の方か?←)は、また別のお話で!
それから、お気づきの方も居ると思いますが、タイトルの「BIRTHDAY」は前篇の「HAPPY」と繋がってます((

隊長、お誕生日おめでとうございました!!