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『(中間報告
七夕話からのすき焼き店からの見回りなう)』

携帯画面にそう入力すると、藺へ送信した。
携帯を持っていないお妙姐さん達には、藺が連絡してくれるらしい。

この中間報告を見た瞬間の皆の表情を考えると怖くて仕方がない…。
てか、七夕話→すき焼き店ってどんな流れだよ!
話全然噛み合ってないし!

『(変な期待をしてたアタシも馬鹿だったけどね…)』

これじゃあいつもの日常と全くもって変わんないよ…。まぁ、すき焼きで時間稼ぎは出来たけど←
さて…問題は、残り半日をどうやって神山に邪魔されずに過ごすかだな…。

「瑚町」

『Σはい!!!!』

不意に総悟に名前を呼ばれて驚く。
さっきの事があったせいか、総悟の声を聞くたびに頭がカァッとする。
あー。かなり可笑しくなってる…
総悟はだるそうな顔をしていた。

『な、何でしょう!』



「…そろそろ帰んねェかィ?」



それは、今日のアタシにとって総悟に今一番言ってほしくない言葉だった。

『……え…どうして?』

ヤバい。呂律が回んない。

「だってなんやかんや見回りして、もう5時半ですぜ?」

『……』

「だからさ、帰りやせん?」

『……』

総悟はアタシの返事を待っているようだ。
アタシは何も言えなくて、そのまま俯いてしまう。

今日のために皆で考えたシチュエーションだってまだ一回も成功していない。
それに、何より一番始めに誕生日を祝いたい。

総悟にとって、今日は退屈な人生の一部のうちに変わりはないのかもしれない。
けれど、アタシにとってはこの日にかかってて…

いろんな感情がごっちゃ混ぜになって頭を混乱させる。
そしてややあってから、アタシは小さく呟いた。

『……帰りたくない』

「は?」

総悟の反応は正しいと思う。
だって、もう見回りは済んだのに帰りたくないって言うのは可笑しいからね。

『ごめん、総悟。でも、帰りたくない』

段々呂律が直ってきたと思ったら、今度は声が震え出す。
アタシは自分の隊服のスカートをギュッと握った。
手汗が酷い。

「どっか行きてェとこあんの?」

総悟事態は怒ってないようだけど、なぜか総悟が怖かった。
アタシが我が儘を言ってるからかな。

『ないよ』

「…じゃあ帰りやしょうや」

今日に"限って"総悟は何でこんなに屯所に帰りたがってるのか、だるそうなのか、七夕話の会話が噛み合わないのか知ってる。

だって、"幼馴染み"だもん。





総悟は"七夕"が嫌いだ。





『だって、』


だからアタシ…いや、アタシ達はあえて、誕生日当日じゃなくて今日を選んだの。





『明日、総悟の誕生日だから』