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『うわああああ…どうしよ藺!アタシ何も準備してないよよよよ…(ノД`)』

「うん。さっきの叫びを聞いて、準備と言うか誕生日事態を忘れてるなって一瞬で把握出来たよ」

本当にどうしよ…すっごく忘れてた。
一生の不覚ってこの事を言うんだね…。

アタシはどうしたら良いか分からず、挙動不審に手をぶんぶんと振った。
総悟の誕生日まで、もう殆ど時間はない。

今から数ヶ月前、アタシは藺に『総悟の誕生日は盛大にしたいZE☆キラッ!!』って宣言していたのだ。
それすらすっかり忘れていた。

「今から準備すれば何とか間に合う、かな」

藺は僅かに首を傾げた。
計画性のある藺が首を傾げると言う事は、かなりギリギリの状況なのだろう…。

『じ、しゃあ…パーティーとかは、難しい…かな…?』

「材料による、かな」

藺は苦笑いをした。
それを見てアタシは、ガックシと肩を落とした。

「あ、でも」

目をキラキラさせる藺の目は、良い事を思い付いたと言っている。

「サプライズが出来ない分、7月8日になった瞬間、一番始めに沖田先輩を祝えば良いんだよ!」

一番、始めに、だ…と…?

途端にアタシの中の何かが萌え…もとい、燃えだした。

『めっちゃ良い案じゃん!!!!そうだね!そうすれば良いんだ!!』

「でしょ!?後は誕生日を祝うシチュエーションを考えて、プレゼントを準備すれば良いだけさ!」

『おお…やるなぁ藺!』

ぐはははは…とアタシ達は廊下の中心でどす黒い笑みを浮かべた。




次の瞬間だった。




「副隊長も、沖田隊長の誕生日を祝うのですか!奇遇ですねー!!」

『「!!?」』

この声は。と二人は瞬時に声のした方へと振り向く。

『な…』

そこには一番隊に所属する、神山がいた。
彼の特徴である瓶底眼鏡が朝日太陽により、強烈に光っている。
…眩しい。(^言^)

「神山!…って事はまさか、アンタも…」

「桜神さんの言う通り、自分も沖田隊長の誕生日を祝うつもりです!!!」

『Σやっぱりかよおおおおおお!!!つか、声でけぇ!!!』

あーもうショックすぎる!
まかさまかさの神山も祝うつもりだったなんて!!

「沖田隊長にはいつもお世話になっているので、恩返しをしなくてはと思いまして!!」

「(その割にはケータイの電話帳に、沖田先輩のメアドを"ドSバカ"で登録をしてるよな…)」

「沖田隊長をどう祝うか悩んでいたら、先程お二人が話してた会話を耳にして…
なのでその案、参考にさせていただきます!!!」

神山はビシッと敬礼をすると、そのまま走ってどこかに言ってしまった。

『Σちょっと待てええええええええ!!!!!』←即答

「……瑚町、非常事態だな」

神山が去って、一番最初に言った藺の言葉がそれだった。

『…そんな』

がっかりしてる割には、神山を追い掛けずに、オッサン臭く頭をボリボリ掻いてるアタシは本当にマイペースだと思う。

『…神山より先に祝うしかないな』

手段はそれしかない。

「…じゃあ俺は、瑚町が勝つよう、しっかりサポートしなきゃね」

藺はニッコリと笑って言った。
本当に彼は良い子だと思う。
アタシは一気に疲労に満ちた機嫌を回復させようと、再び伸びをして、藺に言った。

『よし、じゃあ藺に頼みがある!総悟が好きそうな誕生日プレゼントを蘭とググって来てくれ!
アタシは女子軍の皆とシチュエーションを考えてくらぁ!!』

「おk、把握した!!」

アタシ達はそれぞれ別れて作戦を組み立てる事になった。







熱い誕生日が始まる。