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枯れ果てた戦場。
あの日、この場で唯一立っているのは、アタシと君だけだった。

周りには身を真っ赤に染めた人達が無様な姿で横になっている。



「お前は奏じゃねェよ」



君はそう言った。
世界で初めて、君はアタシにそう言ってくれた。



「妖刀に憑かれてようが洗脳されようが、瑚町は瑚町に変わりはねェし」

それは、…ベタかも知れないけど、凍り付いたようなアタシの感情を一気に溶かしてくれるような感じだった。

「例えいつか、お前の中のお前が完全に奏に狂わされたなら、そん時は俺がアンタを元に戻してやらァ」

だから、そう言って君はアタシの頬につく、大量の飛び血を素手で拭き取る。


"もう独りで抱え込むな"と彼は言った。



その時の彼の表情は昨日の事のように覚えてる。


武州時代。彼が孤立していた時、泣きそうなのを懸命に堪えて、アタシの前で精一杯笑った、あの表情を思い出させた。



その時決めたの。
君が狂ったアタシを戻してくれるのなら、その分アタシは君を護らなくちゃいけない、って。