ゴミ箱 | ナノ


濁ったアイスティー


中学2年の春の事だった

黙っててごめん、実は今日引っ越すんだ
ありがとう、さようなら
そう告げて携帯の電源を消す
この携帯はもう捨てよう、きっとアイツらから連絡が来てしまう
俺のことは忘れて欲しい




あれから何年経ったのだろう
まさかこんなところで会うなんて
…っ、名前?
そう言いながらこちらへ向かってくる幸村
高校生になっていた俺たちは昔の面影を残しているが昔と比べると全く違う顔になっていた

俺は逃げるようにその場から走り出す
しかしもちろん幸村の方が速いわけであっという間に腕を掴まれた

顔はまるで仇を討ちにきた人みたいな、今まで俺が見たことない表情だった
誰だよ、無駄な足掻きだが知らないふりをしてみる

忘れたとは言わせないから

ぎゅっと俺の腕を折りそうな程強い力をかけてくる幸村
結局俺の家で話し合うことに

お茶を出そうと台所に向かうとそれさえも阻止され俺の部屋へ連れてけ、と言う視線を向けられる

俺の部屋は殺風景で必要最低限のものしか置いていなかった
沈黙の状態が続く
今日はこんなに寒かっただろうか

立ち上がったと思うと幸村は俺を床に押し倒し俺の頬を平手打ちした
何も言わずただ涙を流しながら何度も俺の頬を叩く幸村に俺は何も言えなかった
俺の頬には冷たくしょっぱい涙がたれてくる
それを拭う資格も赦しを乞う資格も俺には無い


ごめん

震えた声でただそう告げると
最後は首に手をかけ

ばか、ばかやろう
と呟いて手に力をかけてきた


随分と前に冷蔵庫に入れていたアイスティーは濁ってしまっていたようだ



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