ゴミ箱 | ナノ


減法混色


赤、青、黄色、色んな色、型のビーズとスパンコール、ビー玉などありとあらゆる綺麗な物を詰め込んで青い水を注ぐ。

太陽の光に照らすとキラキラと星空のように輝くボトルはとても綺麗だった。何度も振ってはゆっくりスパンコールが沈んでいく様子を見て楽しんだり…あっ、そうだ。別のボトルも持ってこよう。そう思い机から離れて別のボトルを持ってくる。色が違うだけでも印象は全く違っていて、一つ一つ違う輝きを持っていた。きっとこんなに綺麗なんだから混ぜたら綺麗なんだろうなぁ…そう思い俺はもう一つボトルを用意する。全てのボトルから少しだけ水を取り出し、一つの容器に入れていく。すると何色かチャポチャポと音を立て注いでいるうちに俺は違和感を感じた。
あれ、おかしいな何でどんどん濁っちゃうんだろう、綺麗なものが集まったらもっと綺麗になるんじゃないの?
綺麗だったはずの明るい水はどんどん元の色ではなく暗い暗い色に変化してしまった。
思い通りに行かなかった俺はイライラして、全てのボトルの水を捨て、空にして、捨てた。それ以降、ボトルは一生机の上に乗ることはなかった。




いつか昔の記憶が蘇ってきた。
減法混色なんて知らなかった頃、俺は綺麗な色なんだから混ぜたらもっと綺麗になる。そう信じていた事があった。しかし現実は違っていて、光でない色は混ぜれば混ぜるほど暗くなっていくのだ。

きっとそれと同じなんだろう、ねぇ。幸村。

混じれば混じるほど、どんどん濁っていき最後には黒に近づいて行く。しかも厄介なのは一度混ざれば元に戻せない事だ。一度濁って仕舞えば最後、最初の輝きはもう取り戻せない。俺と幸村もそんな関係だった。混ざりすぎた、とでも言えばいいのだろうか?

最初はキラキラして輝いていたこの恋も、俺が新しい色を持って加わる度に濁っていく。最初は一緒に居るだけでもあんなに幸せで、楽しかったじゃん。手を繋いでデートに行ったり、お揃いのキーホルダーを買って大切にしたり、ファーストキスだってあんなに優しく、そっと触れるようにしてくれた。


そうやって二人が交わる度に、彼はどんどんおかしくなっていく。君の為と言い傷つけられた身体はもう汚くて、純粋のカケラも残らなくなったこの身体。

部屋の片隅で聞こえないくらい小さな嗚咽を漏らす。きっと何度やっても変わらない。なんで分かってくれないの?
「今更じゃないか。だって、黒の方が綺麗だろ?」
ほら、きっと価値観が違ったんだね。


back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -