ゴミ箱 | ナノ


ねっちゅうしょう


肌にべっとり纏わりつく湿気と太陽の熱を照り返すアスファルトがどうも気持ち悪くて、軽い吐き気を覚える。
おまけに蝉は誰に遠慮することなくミンミン間髪いれず鳴き続けその音さえ煩わしく感じてしまう。いい加減頭も痛くなってきたし、目の前はだんだんかすみ始め頭の中では危険信号が鳴り始める…とりあえずこのままでは冗談抜きで死んでしまいそうだ。どこか涼しい場所で休まなければ。そう思い近くにあるコンビニへ足を運ぶ。外の地獄とは正反対で、自動ドアが開くとそこはまるで天国のようだった。先程まで熱気を帯びた身体がエアコンの風でだんだん冷えていくのが感じられる。だが真夏のコンビニは冷房をガンガン効かせているようで涼しいを通り越してもはや寒い。日に焼けまいと着てきた長袖の上から腕を摩る。

十分身体は冷えたのだが今もう一度あの地獄に戻ろうとする気は起きるはずもなくそのまま目的もないまま店内をぶらつく。
あ、新しい味のお菓子出てる。そういえばこの雑誌新刊出てたな。だとかしょうもないことを考えながら一人店を歩き回っていると見知った人に出会った。

「あ、先輩。何してんすか」

「財前、あー、別に涼んでただけやけど…」
ばったり会った後輩とたわいもない会話をする。彼は確か財前光君だったはず。あまり面識は無いが白石といる時に話した事があるので覚えている。正直、何を話して良いのかよくわからない。とりあえず今日も暑いな、とありふれた適当な天気の話題を吹っ掛ける。そうっすね。とこれまた淡白な返事が返ってくる。え、それだけ…?気まずい沈黙が二人の間で流れ始めた。確かにさっきのは俺が悪いな、「暑いね」といわれ「そうですね」以外の話題を出す方が難しいよな。
気を取り直して別の話題を振るもやはり単純な返事で済まされてしまう。


後輩って難しい、どっかの一年ほどとまでは言わないがもうちょっと反応が欲しくなってしまう。
そう思いながらなら食べ物でどうにかしようと思いアイスコーナーへ進む
「何か食べたい?好きなの選びや、俺奢るし」
と財布を取り出して笑顔で問うと戸惑って遠慮していたが俺が無理矢理買った。「すみません」と申し訳なさそうに謝る後輩はどこか可愛げがあって、やっぱり大人びててもちゃんと年下なんだなと実感できた。


公園のベンチ、二人で座りアイスを食べるこの光景はなんとも言えない。
なぜかどうせならそこで食べようということになり俺は今後輩と一緒にアイスを食べているが一緒に食べることにあまり必要性を感じられなく何を考えているのかと単純な疑問が生じた。
俺が質問しようと口を開こうとしたが先に喋ったのは財前で、「そういえば今日こんなに暑いのに長袖、暑くないっすか?」と問われた。
「うーん、まあ暑いけどまあ日に焼けるよりええかな〜って…まあさっき熱中症になりかけたしあんま良くないんやろうけど」
と返事をする。

〜略〜



「先輩、ゆっくり"熱中症"って言ってみてください」
俺は財前の意図を汲み取ろうともせず、何も考えないで言われた通りに"ねっちゅうしよう"と言葉を繰り返す

気づいた時には世界が止まっているみたいで、人生で一度でも経験したことのない感覚に襲われる。
ファーストキスは、甘いイチゴ味と決めていたはずなのに。口内に残ったのはさっき食べたアイスクリームの味だった。ただ言えるのは胃もたれを起こすくらい甘かったことだ。



……もう一回コンビニ入ろうか、暑い








back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -