ゴミ箱 | ナノ


吸血(仮)


思い出せばあの頃からだったっけ
アイツからいい匂いがしたの

アイツが体育の時間思いっきりこけて膝を擦りむいた時
あの日はちゃんと食事とってたし腹が減ってた訳でもない。なのにあの膝に飛びついて、その膝から流れ出る血を吸い尽くしたい衝動に駆られた
その匂いは鼻を塞ぎたくなるほど甘くて、でも不快な香水の香りとは全然違う自然な匂い


その日からアイツが怪我をする度 襲いたい衝動と戦うことになった
しかも今までそこら辺の女の血を食事にしてたけどそれを口にしようとすると吐くようになって日に日に襲いたい衝動は強くなった

先輩たちも俺が食事出来なくなったことに薄々気付いてたし心配してくれてた
でも、先輩たちにいつあの存在がバレるか不安だった
あんな美味しい存在先輩にバレたら全部持ってかれちゃうだろ

まあ、その心配も杞憂でアイツは怪我した状態で先輩たちと接触することなんて全然なかったから安心した


それから一週間後俺に最高のチャンスが訪れた

体育の時間、バスケをしている時に俺は間違ってボールをアイツの顔面に当ててしまった
もちろんその時は故意じゃなくてほんとに事故だった

蹲ったアイツに近寄るといつもより濃い、甘い香りが脳内に走るわけ
よーく見てみると顔を押さえてた手からは真っ赤な血が流れていた
いつもより間近で見るとやっぱり美味しそうで喉がなった


残ってた理性で襲いたい感情を押し殺し俺はボールを当てた責任として保健室まで連れて行った

「俺って鈍臭いよね、あはは…えっと、ごめんね切原くん授業中なのにわざわざ保健室まで付いてきてくれて」
とティッシュで鼻を押さえて笑う姿に俺は思わず笑ってしまった

急に笑う俺に戸惑っているうちに鼻を押さえる手を無理矢理離したらたらと垂れてくる鼻血をペロっと舐めた

ああ、やっぱり美味しい
最近まで一口も受け付けなかった血が嘘のようだ

ひっ…と情け無い声を出して椅子から飛び上がり俺から距離を取ろうとする生意気な足を踏みつけ床に押し倒した

いただきます。


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