仲良しこよし
「なまえ、ちょっと手出してくれないか。」
「いいよ」
りゅう兄に言われるがままに手を出すと、手首にプシュッと何かをかけられた。と、同時にあたりにいい香りが辺りに充満した。
「香水?」
あたしが広げながらりゅう兄に聞くと、りゅう兄はむ、と言って頷いた。
「なんか甘い香りだね」
「む。そうだな。」
りゅう兄は私の左手を握り、自分の顔の方に私の手を持っていき匂いを嗅ぎはじめた。最初は、何とも思わなかったのだが、香水の香りを嗅ぐ為とはいえ、私の手を掴み、私についた香水の香りを嗅いでいるのだ。
普通に考えて、恥ずかしい。なんというか…りゅう兄は私のお兄ちゃんなんだけど、1人の男な訳で。
やっぱり兄弟でもこういうのは意識しちゃって恥ずかしい。
って、私は何を考えてるんだあああッ!とりあえず落ち着こ、冷静になろ。
りゅう兄はまだ匂い嗅いでるし…。
「りゅう兄、いつまで嗅いでるの?」
なんとか落ち着いた口調を作り、りゅう兄に聞いてみると、りゅう兄も無意識のうちに嗅いでいたのかハッとしたように私の手を離した
「わ、悪い。」
りゅう兄は私が怒っていると勘違いしたのか、謝ってきた。
別に私は怒ってる訳じゃなくて恥ずかしかっただけなので、大丈夫だよ、と告げて話を戻した。
「何の香りかわかった?私、甘い香りってことくらいしか分からなかったんだけど…。」
「む。多分だが、いちごのタルトの香りだ。」
りゅう兄が、なまえももっと近くで嗅いでみろと、言ったので私も匂いを嗅いでみる。
私は人より甘い物に疎いせいもあってか正直よく分からなかったが、ほんのりといちごの香りがした気がした。
「あ、なんか今いちごの香りした気がする!いい匂いだね」
「だろ。この香水なまえにやるよ」
「え、いいの?!」
きっとこの香水はりゅう兄いきつけのケーキ屋さんでもらったものだと思う。
だからりゅう兄の大事な宝物のひとつなのに、私なんかが貰っちゃってもいいのだろうか。
「ああ。こうゆうのはなまえが持ってた方がいいだろ」
後輩にも生クリームの匂いを垂れ流すな、って言われたしな、と何とも言えないような顔をしていうりゅう兄。
りゅう兄に対してそんなことを言う後輩くん?をちょっとどうかと思うが、こうゆうのを真に受けるりゅう兄が可愛いと思う。
「あたしもこうゆうの疎いし…よかったら一緒に使おうよ!同じ香り、みたいな感じでさ」
私って疎いものが多いなと実感しながら、りゅう兄に提案する(女としてこれでいいのかな)。
「い、いいのか?」
「もちろん!てか、りゅう兄のだしね」
「なら、一緒に使おう」
「うんッ」
仲良し兄妹
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